ちょっとややこしい話ではあるんですが、とある企画のためにFacebookに書いた文章を転載します。全部で4回分あります。
2022年4月から9月まで放送されたNHKの朝ドラ『ちむどんどん』を見ていたら、ちょっと自分にとってはnot for meで、あまりにあまりでつらみが溜まってしまったので、突発的に書いたという文章です。ブログに転載するときにちょっとだけ見やすく加工したり誤字脱字を修正したり加筆修正をしたりしています。が、あくまでちょっとだけなので、ものすごく整理されて読みやすくなっているとかは期待しないでください。
その1は5月11日(水)の深夜に書いたもので、その時点でそう感じたものを推敲もなしに書き連ねたという、勢い重視の文章なので後から見て違うとかその解釈はどうなんとか、そういう意見もあると思いますが今さら何かを言われても困るし、当時はそういう感じだったんだなとでも思ってください。
あとは、Facebookのフレンド限定で書いたもので、見ていない人も多いと思ったため、どういうお話なのかということをざっくりと説明した上で書く(そうしないと何で愚痴をこぼしているのか伝わりにくいと思ったため)という構成になっております。
とまあ、いろいろと言い訳をした上で、どうしても気になった人だけ「つづきを読む」で読んでもらえればと。
(5月11日深夜投稿)
最近、NHKの朝ドラ『ちむどんどん』をつらいつらいと言いながら見ているのですが。あ、これは1ヶ月分以上のつらみが募った文章でめっちゃ長いので朝ドラを見ていない人は読まなくていいです。
なんでそんなにストレスが溜まりながら見続けているのかといわれると、早起きが習慣になったのでその流れで見ているということと、こんなにつらいのはなぜなのかというところを自分で納得するまで考えてみたいということとが大きな理由だったりします。
ここから劇的に面白くなることはまあないだろうなあ、とあきらめてもいますので。
なぜ面白くないし、ストレスがたまるのか。
いろいろな理由はあとで羅列するんですが、先日少年ジャンプ漫画賞のTwitterアカウントがおっしゃっていたことにあるのではないかと思い至りました。あ、ネタばらしとか気にしないで書いていきます。
脚本家の小林靖子さんが昔インタビューで「設定に矛盾はあってもキャラの感情に矛盾がなければ問題なく読める」と言ってました。難しく考えず、このキャラの感情は整合性がとれてるか?だけをまず抑えましょう #Peing #質問箱 https://t.co/QlSm0dN8A3
— 少年ジャンプ漫画賞 (@jump_mangasho) 2022年5月9日
脚本家の小林靖子さんが昔インタビューで「設定に矛盾はあってもキャラの感情に矛盾がなければ問題なく読める」と言ってました。難しく考えず、このキャラの感情は整合性がとれてるか?だけをまず抑えましょう
この、キャラの感情の整合性がとれていないというのが物語に入り込めない一番の理由かなと思ったわけです。
返還前の沖縄やんばる村に住んでいる主人公の暢子は、小さいときから食べることが大好き。お父さんのおそばも兄妹の中で唯一完全再現ができたり、初めて連れて行ってもらったレストランに感激したり、おいしいものにこだわる描写があります(子役編)
高校に入ってからは、(小学生から続いていたようですが)家族の食事当番をやっていて、部活には入りません。でも足が速いので陸上部の部長に勝負を挑まれたり、親友の早苗が料理部だったりするのでときどき料理を手伝ったりとかしています。
また、雑誌か何かからか入手した料理の写真をノートに貼り付け、いつか食べたいメモみたいなのを作っていたりもします。これは幼少期からの習慣の模様。
ここまではいいんですよ。矛盾とかもありませんよね。
ただ、肝心の「料理をすることが好き」という描写がこのあと出てこなくなるんです。それどころか、「就職したら家族の料理当番をしなくて良い」とか、料理は面倒、料理をするのが好きではないという描写が多い。
食べたいメモも、それに合わせて料理をしている形跡はなし。あくまで、いつか食べたいものをメモしているようにしか見えていません。このメモを楽しそうに作るシーンとかもないんです。子役時代のときは書き込んでいくシーンはちらっとありましたが、成長するにつれてなくなります。
そもそも食いしん坊と、料理をするのが好きというのは違う資質なわけです。なので、あくまで暢子は「食べるのが好き」な子であって、「料理をすることが好き」なようには一切見えていないわけですね。
そういうところに、無理矢理料理の才能があると思わせたいのか、唐突に料理に対する才能のきらめきが見えるシーンが挿入されるわけです。
早苗に連れて行ってもらった生まれて初めてのハンバーガー屋で、「ハンバーガーには揚げたジャガイモが合うと思う」と言い出したり。
普段から料理を楽しそうにやっていたり、貧乏で予算が限られている中で家族の料理当番として、創意工夫を凝らしていたりとか、食材を工夫したりとか、そういうシーンがあれば説得力があるんですが、ないんですね。唐突感が大きすぎる。
もうひとつのきらめきは、物語の重要な転機となるところで発揮されます。地域の産業まつりの、ヤング大会に暢子の通っている学校の料理部も出ることに。ようは屋台を出して、人気投票で他校の料理部と競うというもの。暢子は早苗に頼まれて、料理部の助っ人として参加します。
父親直伝の沖縄そば「やんばるそば」は部員に好評で、それで戦うことに。そして当日、ライバル校の登場や、役員の忖度による場所変更等のトラブルも乗り越え、やんばるそばを売っていきます。
ところが、ドジな部員がそばつゆの鍋をひっくり返してしまうハプニングが! このままではやんばるそばは出せない。どうしよう! 妹から受け取ったシークヮーサーを食べた暢子は、ひらめくのです。そばは無事だったのだから、他のそば料理を作ればいい、と。
そうしてささっと作ったのが、食べたいものメモに記載されていたナポリタンでした。やんばるナポリタンはやんばるそばにも増して大好評。見事、ヤング大会で優勝します。
……この時点で、大量のケチャップはどこから? とか、途中で料理を変えていいの? とかいろいろあるのですが、置いておいて。優勝スピーチをする際に、暢子はチームのこととかナポリタンのことは一切喋らず、唐突に自分語りを始めるのです。
「自分はいままで何をやりたいのかがわからなかったが、今日、人に料理を振る舞って、その楽しさに目覚めた。東京へ行ってレストランで働きたい!」
就職活動をしていて進路に悩んでいたからだとは思うんですが、あまりにも周りが見えてなくて自分のことしか考えてなさすぎる発言ですよね。
まあそうして料理人を志すことになったんですが、唐突に今週またきな臭くなっていきます。
駄目人間で、日本中のヘイトを集めている兄の賢秀が、詐欺投資話にひっかかり、今までもたくさんあった借金が倍になってしまうのです。
当然、暢子の上京費用なんて出せるわけがありません。そのことがわかった暢子は兄をなじるのですが、真っ先に出た言葉が
「東京へ行くって早苗とかにも言っちゃったのに、どうするの!」
料理人になる夢とかそういうのよりも、友達への見栄が優先される=夢の優先順位低いな、となるわけです。なんだかなあと。
さらにこのシーンでは、ふてくされながら料理をしているし、とかく暢子の料理の扱いが雑なんです。
結局のところ、物語の都合上「東京へ行って料理人になる」というのが決まっているんだけれども、本人の描写すべてが「料理人になりたい」となっていないんですね。むしろ、料理をするのが嫌い、ふてくされながら料理をするというシーンが多い。ああ、これがキャラクターの感情に矛盾があるということかと。
ちなみに他にもダメと感じるシーンはたくさん出てきます。
- 父親を亡くしてから、一家は貧乏になるんですが、その貧乏をなじるためだけのキャラが入れ替わり立ち替わり登場して主人公たちをなじる。1週間分の放送でなじったら二度と登場しないし、次のなじり役が出てきて繰り返す
- そもそも1960年代の沖縄で服とかがボロでつぎはぎが当たっている子は珍しくもないと思うが、主人公一家だけが入れ替わり立ち替わりなじられる。周囲に大人がいても止めることはない。
- モブキャラが単に主人公達に嫌がらせをするためだけの「記号」にしかなっていない
- 貧乏が原因で、口減らしのために4人兄妹を1人東京の親戚に預けることに。暢子が立候補して、バスにまで乗るも、やっぱり嫌だとバスを強制的に停めて東京行きはなかったことに。じゃあ借金どうなるのと思ったら、翌週に「7年後」で、借金の描写なし
- そんな状況なのに7年後には4人兄妹は全員高校に行っていた。長女は短大出て教師に。そのお金はどこから出たの……? 1960年代の日本って、そんな進学率じゃなくないですか。日本じゃないけど
- これだけ子供時代は「貧乏」がテーマだったのに、お金を大事に思う描写が極端に少ない。家にお金を入れている長女が、自分のために服を買ったのを泣きながら後悔するシーンのみ
- こんな状況なのに無職でぷらぷらしていて酒を飲んだり喧嘩にあけくれたり、迷惑をかけたり、家の借金を増やしていく兄がクズで、演じている役者さんがかわいそうになるぐらいヘイトを集めている。ついでにいうとそれをすべて許す母親も。沖縄はそうだと言われたらそうなのかもしれないけど
- お金がないし借金が増えて、一家にお金を貸している叔父さんから「上京とか、就職先も住むところも何も決まっていないのにできるわけがないだろう。お金もないのにとんでもない」と反対されているにも関わらず、母親にお金を借りて卒業旅行で東京へ行きたいという暢子。返還前の沖縄で渡航許可がいるようなところに、就職では無く遊びに行きたいというの?! しかもそれをお姉さんに怒られたらふてくされるの?! そして、そんな娘のわがままをかなえるために給料の前借りをして借金を増やして叔父さんにお金を少しでも返して上京を許してもらおうとする母親。喧嘩をした罪悪感からか、同じく給料の前借りをして一家の借金を増やして上京費用を作ってあげる姉。全然美談じゃないのに、美談に仕立てようとして、大失敗しているとしか思えない……
あとは、ようやくわかってきたんですが、この一家、TPOとかわきまえず、いついかなるときも自分のことしか喋らない、という特徴があります。相手のことを慮った発言がほとんどない。
大会で部のことやメニューのことを聞かれているのに自分の夢しか語らない暢子はもちろん、迷惑をかけた相手に謝らない兄もそう。娘の夢を叶えたいと言って借金を増やしていく母親もそう。姉も妹も若干そんな気があります。この3人に比べたらマシではありますが。
というわけで、ちむどんどん、ストレスが溜まるんですが、なんとなく自分の中で何がダメでストレスの原因かがわかってきたので、今後はどうするか考え中だったりします。そのままなんとか見てみるか、土曜日のダイジェスト版だけ見て面白くなっていそうだったら再び見るに切り替えるか、完全に離脱するかの分岐点というわけです。はい。
※5/12朝追記
失踪した兄が(作中では数ヶ月しか経っていないのに)東京でプロボクサーになって多額のファイトマネーを送ってきたのですべての借金を払うことができ、無事に沖縄編完! という展開をうまく飲み込むことができていません。う、うん。まあ、そうだね。解決して良かったね……?