醤油手帖

お醤油について書いていきます。 料理漫画に関してはhttp://mumu.hatenablog.comへ。お仕事の依頼とかはkei.sugimuraあっとgmail.comまでお願いします

ちむどんどんの感想を書いてみるその4(9/30執筆)

とある企画……というのは、オンラインで行うちむどんどん反省会のためなんですが、Facebookに書き殴ったちむどんどんの感想その4を転載します。

急遽10/3(月)にやることになりそうです。なんかオーディエンス募集するかもとかとのことなので(まだどういう仕組みなるかわかっていません)慌てて転載しているというわけでした。

例によって基本的にnot for meなドラマを見ていて限界を迎えたら書き殴るというスタンスなのですが、あれこれ書きすぎた結果、最終回近くになるといろんな人から「最終回になったら書くんでしょ」と言われまして。まあ、よっぽど最終回があれじゃないと限界にならないので書かないかも……とか言っていたらアレだったので書いてしまいました。

基本的にはぐわーってなった勢いのまま記憶に頼って書いているので、時系列とかに間違いがあるかもしれません。その辺はまあ、勢い重視ということで許してください。

とまあ、いろいろと言い訳をした上で、どうしても気になった人だけ「つづきを読む」で読んでもらえればと。自分はこのドラマ楽しんでいたよ! という方は読まない方が良いかと思います。

(9/30 16:00頃執筆)


終わった……ついに終わりましたよ!

いやー、半年間、本当に厳しかった。もちろん、ちむどんどんの話です。楽しんだという方もいるとは思いますが、完全にnot for meだった人の意見です。例によって気絶するほど長いので、興味ある人もない人も読まない方がいいですよ!

総評といたしましては、毎週これより下はないだろうというところを更新し続けた、右肩下がりのドラマでしたね。評価に0を通り越してマイナスがあるということを知ることになりましたし、岡本太郎の言う「マイナスに飛び込め」ってそういう意味じゃないだろうと。

まあ、あれこれ言うまえに、ざっくりここまでのお話をまとめておきましょう。例によってざっくりじゃないですね。長いです。

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矢作さんを雇って杉並にオープンした沖縄料理店「ちむどんどん」。人手が足りないだろうからと、優子(母)のはからいで、歌子(妹)が上京してきます。暢子には冷たい態度をとる矢作さんも、歌子には優しく接するのです。それを見て嫉妬心が沸き起こる智。

ここ、重要なポイントです(その1)

そしてオープン初日こそ知っている人がきてくれたりしたものの、あっという間にお客さんは減りまくり、3カ月後には閑古鳥が鳴いています。なぜダメなのかは、初日にきた重子(和彦母)&お手伝いの波子さんが「以前に届けてくれたお弁当の方がおいしかったような……」とヒントを出していたりしますが、なぜなんでしょうね。それでも暢子は自分は悪くないと何も改善をしないまま時は過ぎます。

どうしよう、お金がないと悩む暢子。矢作さんをリストラしようと言う和彦。それはできないという暢子。そしてその言い争いを窓際でやっているため、外にいてすっかり聞いてしまう矢作さん。

そんな矢作さんにはフォンターナを一緒にやめた同僚から、もっといい条件での引き抜き話がきます。でもどん底から救ってくれて、なおかつ信じてくれていると言った暢子のためにと、しばらくは無償でいいからちむどんどんで働くと矢作さんは言うのです。給料遅配したら辞めると宣言していたけど、暢子の信頼に心を打たれたのですね。

ちなみにこの間に暢子が信金に返すお金をカウンターの上に置き忘れて前科のある矢作さんが疑われるとかそういうドタバタあり。

信金の人も会計を見直し、原材料費の削減を提案します。特に、豚肉に費用がかかっていると。でも暢子は、皮付きの豚肉にこだわり、そしてその加工はいくら探しても見当たらず、沖縄から取り寄せているしここを変えることはできないというのです。

ここ、重要なポイントです(その2)

もうどうしようもなくなったため、ちむどんどんをいったん休業します。そしてその間に立て直す方法を考えることにするのです。

とりあえず料理のことを、フォンターナの二ツ橋シェフに相談する暢子。すると、イタリアに行っていたオーナーがもう少ししたら帰ってくるとのこと。

そこで同席していた和彦が「オーナーイタリア出張おつかれさまでした会」の名目で「暢子を励ます会」を開くことを提案します。独立した人にはアドバイスをしないオーナーですから、おつかれさまでした会にすれば自然と(?)一緒にお食事ができるしその席でアドバイスをもらっちゃおうということですね。

……和彦、ずうずうしくない? というのはおいておきまして。

ここで、にーにー達と線が交わるタイミングがくるので、にーにー側の話もまとめておきましょう。

すべてを壊してしまったにーにーこと賢秀は、心を入れ替えてまた猪野養豚場で働きます。そして、そこの娘である清恵といい感じに……なっていない。なっていないはずなんです。

清恵に対して「僕は生まれ変わる! 真面目に地道にコツコツ生きていくと決めた。もしご迷惑でなければ、ここで一生、一緒に働かせて下さい!」と言って、清恵は「一生? 一緒に? それはつまり……」とプロポーズと勘違いするシーンがあるんですが、勘違いということがわかる描写になっているんです。一応、ときめき風(にーにーが一目惚れをすると向かい風が吹いてにーにーの前髪を巻き上げる演出)が清恵に少し発生してはいたんですが。

まあそれで真面目に働いているにーにーは、猪野養豚場の名刺ももらい、営業の仕事も少しずつするようになります。そして、猪野養豚場の豚肉に興味を持ったホテルへ営業するために、東京に清恵と一緒に行った際、フォンターナへ行くのです。

フォンターナでは(違う場所で事前にだったかも)「友達の話なんだけど」と前置きをして、昔若い娘が親と喧嘩して上京して悪い男にだまされて水商売の道に……と語る清恵。賢秀は「そんなことは気にしない。誰だってやり直せる!」と励まします。そうして、好感度をアップしていくのですが、フォンターナの席で事件が起きました。

新たに入ってきたお客に対し、いらっしゃいませーと言う店員。お客さんの第一声は「清恵!」でした。はい、急にチンピラがお店に入ってきて、「おい、清恵だろ。探したぜ」とか言うのです。なんだこれ。お店の人も止めろという感じなんですが。

その顔を見て逃げ出す清恵。とまどいながらも追いかける賢秀。そしてそのチンピラはテーブルで、賢秀の落とした名刺を発見します。

その後、猪野養豚場でホテルの人達と商談を詰めていると、突然チンピラ(涌井)が乱入。清恵に向かって、離婚で傷ついたからと慰謝料を請求して暴れ出します。逃げるホテルの人達。社長が入ってきて「話はあっちで」と涌井を連れ出します。

わけがわからないでいるにーにー。そして一人で戻ってきた社長は清恵の過去を打ち明けるのです。実は18歳のときに喧嘩して家出した清恵は水商売をし、20歳で涌井と結婚。でも涌井は見た目通りのひどい男だったので清恵はひどい目にあいつづけます。そこを社長が見つけて涌井に手切れ金を渡し、別れさせていたのでした。

住所とかは隠していたけれども、にーにーの落とした名刺から割り出されて猪野養豚場まできた涌井。でも社長はこういうこともあるかと思って、あちこち手は打ってあったといい、以後涌井は登場しなくなります。ぶ、豚の餌にでもされてしまったのかな……? という勢い。

それはさておき、疲れたと言って社長が退席すると、にーにーは清恵に「騙したな!」と言うわけです。「あれは友達の話じゃなかったのか!」と。

「普通、わかるでしょ!」「わからん!」と喧嘩はヒートアップし、「騙しやがって。ここから出てけ!」とにーにーは叫びます。

……あの、ここは、猪野養豚場で、清恵はそこの娘さんなんですが。そして二人はつきあっている描写もなかったですよね。いったいなぜ、つきあってもいない従業員にそんなことまで言わなければならなかったんでしょう。

でも、怒って出て行く清恵。「豚の○○がもうすぐ出産だから気をつけて」という書き置きを残して失踪するのです。

困った社長とにーにー。「身寄りの無い女性が働くのは、住み込みの水商売だ!」と言って、とにかく東京で清恵を探そうとします。

というわけで上京した二人。最後に東京で行った場所がフォンターナだったので、とりあえずフォンターナに行くと「本日貸し切り」の文字が。

気にせずドアに張り付いて中の様子をうかがうにーにー。どうも、暢子がいるみたいと気づくと、勝手にドアをあけて乱入してテーブルの料理を食べ始めます。そう、この日は偶然にも「オーナーイタリア出張おつかれさまでした会」の日だったのでした。

というわけで、ここで暢子とにーにーの線が重なるのです。

このおつかれさま会には、もう一人、イレギュラーな人がいました。それが元従業員の矢作さんです。オーナーにアドバイスをもらう会だから、今料理をほとんどやっている矢作さんが来るのは当たり前ではあるものの、いろいろと泥をかけたり犯罪をしている手前、なかなかフォンターナの人達の前に顔はだしにくいですよね。

案の定、めちゃめちゃスタッフににらまれる矢作さん。それどころか、スペシャリテとして出てくる豚料理を、端っこの、焦げ焦げになったところを出されてしまうのです。

それに気づくも、グッとこらえる矢作さん。それを見守る二ツ橋シェフ。このあとで二ツ橋シェフは矢作さんに「よくこらえましたね」とか言うのですが、違うでしょ!!!

仮にもオーナーが招待した客に対して一流とされるイタリアンのスタッフが嫌がらせを行っているわけですよ。お店の格を落とす行為じゃないですか。二ツ橋シェフは気づいたなら注意したり、矢作さんに向かって「おっと、ちょっと端っこの方ですね。良かったら私のと変えませんか」とかいってスタッフが蒼白になったりするのが王道であり一流のお店の所作でしょう。それが、我慢しましたね、とか……

まあ、それはおいておいて。

突然賢秀に巻き込まれる形で参加した猪野養豚場社長も、豚料理を食べて、沖縄の豚がほぼ全滅したとき、ハワイに移住していた沖縄の人達がお金を出し合って豚を送ってくれた、その豚があるおかげで沖縄の豚食文化は守られたという歴史を語ります。オーナーからは郷土料理に対するお話を聞く暢子。

これだけ聞いても、まだピンときていません。でも、さすがにヒントが出そろったので暢子も自分が悪いのではという可能性にたどりつき、ようやく「沖縄料理の店」として出しているのに東京向けの味付けをしているのが原因だったと悟るのです。いや他にも原因はあるとは思いますが。

新しい料理の試食に試食を重ねた結果、出た結論が「豚がいまいち」でした。沖縄から届けてもらっているのに、冷凍技術が当時は未熟だったこともあるのでしょうか。とにかく沖縄料理の味の根幹たる豚の味がいまいちだったという結論が出るのです。

はい、重要ポイント2のところですね。

わざわざ本格的なものを沖縄から取り寄せるこだわりを見せていたのにそれが全ての元凶であると。沖縄disをしているのです。もうちょっと見せ方とか工夫してくださいよ……

悩む暢子、和彦、矢作、歌子。お店で試食を重ねていると、そこに「ごめんください……」と一人の女性が現れます。それは、(暢子たちは知らないけど)水商売に身をやつした清恵でした。清恵は賢秀から「妹がちむどんどんというお店を作った」という話を聞いていたので、見かけて思わず入ってしまったのですね。「休業中」の張り紙があったのですが。

すると暢子はいきなり沖縄そばの試食をしてとお願いします。食べた清恵は「おいしいんだけど、豚が……」と欠点を指摘。そして「良かったらこれを」と、たまたま持っていた豚肉を渡すのです。

いやこれは豚肉を持っているきちんと理由がありまして。

この近くで住み込み水商売をしていた清恵。まかないで作った料理(とんかつだったかな?)が好評だったので、お店の人に「あの豚肉買ってきて」とおつかいに出た途中だったんです。そして、近所にある、猪野養豚場の豚肉を卸している精肉店で購入した帰りにちむどんどんを見かけて寄ったというわけでした。

連絡先を聞かれるも、そこから賢秀に伝わるとまずいとそそくさと帰る清恵。暢子達は残された豚肉を味わってみると、これがおいしい! 理想の豚肉がここにあった!

……しっかりご近所付き合いをしていれば、近所の精肉店で皮付きの豚肉が最初から手に入ったんじゃないでしょうか。

というわけで豚肉が見つかったので、数ヶ月ぶりに沖縄そばをメインにした新生『ちむどんどん』の営業を再開させます。料理の味付けは本来の沖縄料理寄りに。それでいてメニューにはイラスト入りでどんな料理かわかるように解説もつけました。

すると、あっという間に大繁盛!

良かった良かった……となっていたら、暢子が産気づいて出産します。男の子で、健彦と名付けられました。

そして急に話は4年後。

青柳一家は、夏休みを利用してやんばるの暢子の実家へ行きます。そこには数年間東京のちむどんどんを手伝った歌子の姿も。そして滞在中は実家の畑仕事をした暢子。すっかりやんばるの野菜にハマります。

そこに浮上してきたのが智と歌子の恋模様。

もう周りから見て相思相愛なのはわかりきっているけれども(暢子を除く)、どうにも煮え切らない智。理由は、告白して今の関係が崩れるのが怖い、と。

暢子に告白をしたら「仕事に集中したい」と断られ、その数日後に、婚約者がいたはずの和彦と結婚を決められてしまう。さらには歌子の仮病に騙されて無理矢理披露宴に参加させられスピーチまでさせられたことが完全にトラウマになっていますね。

そんな中、暢子の家にみんなを呼んでお食事会をしようとします。智の実家のゆし豆腐と山菜が欲しいという暢子。じゃあ、山菜もとってくると山へ向かう智。そこについていく歌子。ところが、山で智は転んで腰(背中だったかも)を打ってしばらく動けなくなります。

なんとか歌子に支えられながら山小屋にたどりつく智。そこで歌子にあれこれ言われた智は勇気を出して歌子にキスを……しようとしたら、捜索隊が「ここにいるか!」と飛び込んでくるのでした。「あっ、ごめんね……」という捜索隊の善一さん(共同売店の店主)

そんなこともあったので、智は歌子に告白をしようと服装もばっちりとキメて、比嘉家を訪れ、歌子を呼び出します。ただならぬ空気に、これはいよいよかと身構える比嘉一族。

「智ひどい! ゆし豆腐、待っていたのに!」

そこに割って入ったのは、そう、暢子でした。

一切空気も読まず、自分のせいで山に山菜を取りに行った智が怪我をしているのにひたすらゆし豆腐が欲しいと騒ぐ暢子。和彦もたまらず「暢子、そういう空気じゃないから」と必死に止めるも、聞く耳を持ちません。

「いいかげんにしてくれない!!」

と、暢子を怒鳴りつけたのは、博夫(良子の夫)。もう、作中の登場人物もドラマを見ている我々も拍手喝采。あんなにもタイムラインが沸いたことはないんじゃないでしょうか。

普段は温厚で怒鳴らないような人に怒鳴られ、ようやく空気を理解した暢子。改めて告白……のはずが、そういう空気でなくなってしまって切り出せない智。そりゃそうだ。

焦れた歌子は、いきなり歌を歌い出します(なぜ?)

でもそこでリラックスした智は、告白どころかプロポーズ。受け入れる歌子。めでたしめでたしとなったのでした。ちなみに、歌子に最初に抱きついたのは智じゃなくて暢子でしたが。

あ、話忘れていたのですが、4年前(つまり、ちむどんどん再開時)に、なんとか清恵を捜し当てたにーにーはそのまま清恵にプロポーズします。しかも、あんな発言をして悪かったと謝罪つきで。そして結婚して、4年後のこの時点では清恵が出産間近だったりします。よかったよかった。

というわけで比嘉四兄弟の全員が結婚という流れになり、めでたしめでたしという展開の中、もう少しやんばるに滞在する青柳一家。

健彦はかなり気に入ったのか「やんばるが好き! 帰りたくない!」という発言をします。そして畑にハマっている暢子は「やんばるに住む! 歌子がいなくなったらお母ちゃん1人になっちゃうし」と宣言をするのです。

はい、重要なポイント1を思いだしてください。東京のちむどんどんを手伝うために数年間歌子を住み込みで働かせ、その間に母を一人っきりにしていた人の発言です。ううーん、まあ、いいんですが。

というわけで東京のお店は矢作さんに譲り、暢子の送別会が開かれ、無事に実家に転がり込む青柳一家。ここまでが最終週の手前、つまり先週の金曜日です。

では今週はというと……

月曜日:
さらに1年が過ぎ、暢子は畑をやっている。郷土料理の勉強ということで近所のおばあに料理を教わったり振る舞っているうちに「あ、沖縄でもお店をやろう」と思いつきます。実家を勝手に改装すべく、村中の人が材木とかを集めてきてくれて、DIYでお店作りスタート。

火曜日:
突如としてフォンターナのオーナーである房子が沖縄に。オーナーは優子の姉が亡くなったところを見たという人、大里さん(草刈正雄)を連れてきたのでした。姉の最後の様子を語る大里。そして涙ながらに、亡くなる寸前に水が欲しいと言われたが自分達のこのあとを思うとあげられないため、水はないと嘘をついてしまったと優子に謝罪をし、形見の品を渡しました。そしてそれを仕方の無いことだと受け入れ、許す優子。

ここはもう圧巻でした。さすがの演技力としか言いようがありません。

そして、優子は鎮魂の意味もこめて、姉から教わった沖縄舞踊を踊るのでした。

水曜日:
昨日登場した大里さん退場(テレビに出ません)。オーナーも東京へ帰ることに。でも、なぜか見送りに行かない暢子。仏頂面でゴーヤを切っています。あれ、何か話を見逃した……? 喧嘩したの……? と思ったら、なんかよくわからないうちにバスに乗るオーナーを全力で走って追いかけて「また来て下さいねー!」と叫んでいました。バスを追いかけて走るシーンを撮りたかっただけなんですね……

そして、実家を改装した「やんばるちむどんどん」の工事を進めつつ、目玉となる料理の開発をする暢子。沖縄そばに「カラキ(オキナワニッケイ)」を練り込んだものを思いつきます。さすがに独力での開発が難しいので、製麺会社と協力して開発を進めることにしました。

そうこうしているうちにまたナレーションで半年が経過し、「やんばるちむどんどん」完成! ところが、製麺所から機械のトラブルで麵が造れなくなり、オープン日に納品できないという連絡が入ります。

ここで、でました。「うちは諦めない!」

自分で造ることにするのです。ここで「うちは諦めない!」から「だから手伝って!」があればいいんですが、ないまま家族総出で、郷土料理を教えてくれたおばあ達も巻き込んでお手伝いをさせます。カラキをとってきたり、刻んだり。

智は小麦粉を調達してきたりして、結局徹夜で100人分の麵をなんとか完成させるのでした。

木曜日:
無事に開店した「やんばるちむどんどん」。オープンにあわせて、高校時代に陸上で勝負してはサーターアンダギーを貢いでいた子や、良子にプロポーズをした金吾など、なつかしのキャラクター大集合です。

その夜、突然歌子が倒れます。いつもの熱……と思いきや、病院にかつぎこまれて、医者に「手は尽くしたんですが……もう手の施しようがない。あとは本人の気力と体力次第」と言われます。ガチの危篤!

ちょっと血色が良かったり、危篤のはずなのに点滴も心電図もとっておらず、腕には血圧を測るマンシェットを上下さかさまにつけていたりと、アレな絵でしたが、危篤は危篤です。

「お父ちゃんが亡くなって、借金に歯を食いしばって生きてきて、ようやく暢子が念願のお店を出してみんなが幸せになるというときにどうしてこんなことに!」と嘆く良子。

う、うん。借金に歯を食いしばっている描写もなく、他の人に迷惑をかけながら生きてきて、その念願のお店は思いつきで実家を改装したものだけどまあ、作中の人達が言うならそうなんでしょう。

というわけで最終回前日にまさかのガチ危篤。果たしてどうなる?!

金曜日:
千葉からにーにーがかけつけます。病院にかけつけるタクシーはガレッジセールのゴリさん。そう、沖縄を舞台にした朝ドラ『ちゅらさん』オマージュですね。

タクシーから降りて病院に入ろうとするにーにー。「お客さん、お金!」と言うゴリさん。「いらん!」というにーにー。いや、違う、払おうよ。人として!

受付でも「歌子はどこだ! なに、俺を知らんのか!」と大声で騒ぐにーにー。ここは病院ですよ……

そしてなんとか病室に揃う比嘉一家。当然のように歌子をがっしりつかんで揺さぶって起こそうとするにーにー。もちろん怒られます。そして気にしない。

暢子は「そうだ。にーにー、ねーねー、きて」と二人を誘い出し、病院の外へ。そこにはにーにーの替わりにタクシーの料金を払っている和彦が。そこでゴリさんを再度つかまえ、つれていって欲しいところがある! と海岸へ運ばせます。

海岸についたら、海際まで全力疾走する三兄弟。「お金! お金を払って下さい!」と追いかけるゴリさん。でも、気にせず暢子は海に向かって「おとうちゃーん!」と叫びます。良子も「おとうちゃーん!」と。ニライカナイってそういうものでしたっけ……?

「いや、お金を払って下さいよ……」というゴリさんに対し、「うるさい! おまえも叫べ!」と強要するにーにー。そうして3人+1人で「おとうちゃーん!」と叫んでいると、暢子の耳に父親の声が聞こえてきます。「まくとぅそーけー なんくるないさー。いつも見守っているから大丈夫」と。

すると病院では歌子が目を覚ますのでした。

そして202X年。

はい、目を覚ましたシーンから一気に令和へ飛びました。昭和から令和へ。優子の誕生日を祝うべく集まる一族。全員髪の毛が真っ白で、メイクをしておじいちゃんおばあちゃんであることを見せようとしていますが、うんその、コント感が強すぎて、所作も1人か2人を除いてダメでした。

まあ、それはともかく、四兄弟はそれぞれ家庭を築き、子供どころか孫までいます。その孫には四兄弟の子供時代を演じた子役達が!

で、ナレーションで四兄弟がどうしていたのかを一言ずつ解説。賢秀は一応養豚場で真面目に働いて昔家族に借りたお金を文字通り倍にして返し、良子は夫婦ともども教師を続けて校長まで務め、歌子は民謡歌手としてレコードを何枚か出し、暢子のやんばるちむどんどんは大流行した、というわけです。

そして回想シーンっぽく高校時代の一家の1シーンが挿入され、最後に(いつの年代か暢子の人の演技があれでよくわからなかったのですが)シークヮーサーを木からもぎ取ってかじるシーンが入り、そのままカメラが沖縄の海を映して「おわり」でした。

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……「なんだこれは」というのが最終回を見た第一声だし、タイムラインもそんな感じでした。いやほんと、なんだったのか。

全体を通して厳しかった点はいくつもあります。

そこを語る前に、NHKの公式の番組内容を引用しておきます。

大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―。ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあうきょうだいたち。“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四きょうだいの、本土復帰からの歩みを描く笑って泣ける朗らかな、50年の物語。

さて、どういう点がきびしかったのか。

ひとつは、やはり徹底して料理を粗末に扱っていたことでしょう。「ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロイン」と書かれているので、当然料理はおいしそうで、沖縄料理に興味が出て食べたくなり、見終わったあとは「近くに沖縄料理をやっているお店はないかな……」と探したくなる、そんなドラマを期待していました。

蓋を開ければそんなことは一切ありません。ではなぜそんなにも「おいしそう」にならなかったのか。

これはもう前回の愚痴で言ったように、脚本・チーフ演出・プロデューサー・主人公の4人が料理に興味がなかったからとしか言いようがありません。脚本は料理に詳しくないため、空欄にして書き上げ、あとから料理監修の人達の協力を得て料理を当てはめていったという話すら聞きました。

そんな造り方をしているので、一切料理工程や料理の工夫の話が出てこないんです。
実際に食べられない、画面の向こう側、もしくは誌面の料理のおいしさを伝える工夫については、数多くの料理番組、料理ドラマ、料理バラエティ、グルメ漫画が研鑽を積んできました。

代表的なのは、この料理がどうしておいしいのかの理由を説明することです。希少な○○の部位を使っている、この素材とこの素材は組み合わせるとうま味が何倍にも膨らむ、こういう超絶技巧で調理をしている等ですね。料理をしているところが見えたり、使っている素材の面でおいしくなるに違いないという情報を与えるという手法です。

これはグルメ漫画などでは料理人が主人公なことが多いので、調理しながらもしくは調理を審査する審査員が解説してくれたりするし、テレビなどでは食べるときに「こ、これは!」といいながら感想に交えて言ったりもしますね。

それから、シズル感があります。それはみずみずしさだったり、湯気だったり。たとえばコロッケをそのまま紹介してもおいしくなさそうですが、アップでパカッと割って湯気がもうもうと出てきたら、めちゃめちゃおいしそうに感じますよね。

ちむどんどんの料理には、そういった工夫が一切ありませんでした。

料理は完成したものが出てくる。調理工程や調理の工夫の描写はほとんどなし。せっかくの沖縄料理なのに、何も説明もなく、あったとしても「これはてびち!」とかそのレベルの説明で、一番欲しい「てびちとは豚足のことで、豚足をプルプルになるまで煮込んでゼラチン質の食感としみしみの味わいを楽しむ」という情報が得られないのです。

食べたときの感想すら「おいしい」一辺倒。

カラキとはなんぞや? となっているときにカラキを練り込んだ麵を食べた感想が「なんともいえないけどおいしい!」とか、情報量0です。

また、料理を映したいのか、温かいはずのものでも湯気が出ているものはなし。それどころか、料理を強調したいためか、つけあわせがないがしろになっているものがほとんどです。彩りがおいしそうに見えないのですね。

最後の最後にずーっとこだわりつづけている沖縄そばですら、麵がカラキで緑になっているのを見せたかったためか、つゆが極端に少なく麵が上に出ていて湯気が出ていません。つまり、冷めて伸びきった沖縄そばにしか見えませんでした。これは、あさイチでもツッコミを入れられていましたね。

それから製麺所に特注して配合を調整し続けた麵を素人が一晩で作るとか、そもそも普通の包丁で麵を切らずに専門の包丁を使った方がいいよとか(お父さんの形見の包丁アピールのためでしたが)、お店の衛生面の問題だとか、いろいろとツッコミどころは多いのですが、総じて「料理に興味がない人が作ったドラマ」と考えるしかありませんでした。

ふたつめが、物語の動かし方がお粗末、というもの。

物語が進行するのに、何かしらの障害が発生し、それを乗り越える。壁を乗り越えるたびに主人公は成長していく。というのが王道だと思います。

ちむどんどんの場合は、犯罪か恫喝による事件かお金の問題が発生し、主人公は「諦めない」と叫ぶ。すると周りがなんやかや手伝ってその事件が解決し、主人公は成長しない。ということをひたすら繰り返していました。

さすがに更生したのかと思ったにーにーも、最終回でタクシーの無賃乗車を繰り返していましたからね……まあこれは物語を動かす犯罪ではないのですが犯罪は犯罪です。

みっつめは、物語、とくに人物の物語がぶつ切れすぎる、です。

ちょっとわかりにくい表現ですね。えーっと、まるですごろくか人生ゲームかというように、物語が線でつながっていなくて、点で構成されているんです。

その点だけを見るとめちゃめちゃいいことを言っているように見えるかもしれないけれども、線として見ると矛盾しまくっている、そんな描写はない、のオンパレードでした。

なので、雑に見る人には感動的なシーンは前後の話があいまいなのでそのまま感動できるシーンになるけれども、ドラマをしっかりと毎日見ている人ほど違和感を感じて感動できない。そんなドラマだったのです。

例えば主人公の暢子は、小さい頃こそ食べたいものノートをつけたりしているのに、父親が亡くなって家族の食事当番になってからは、いやいや食事を作るシーン中心に描写されています。

ところがいつの間にか、後日「暢子は昔から料理を作ることが好きだった」と周りが言うのです。そりゃ、そのときの「点」で見るといいことを言っているように見えるんですが、線で見るとそんな描写は今まで一切なかったよ、と。

こういうことだらけでした。過去は常に都合のいいように改ざんされますし、変な付け加えが入ります。これで人物に感情移入しろというのは無理があるのではないでしょうか。

改ざんでいえば、にーにーは紛れもなく犯罪者であり、加害者なんですが、本人と家族は一貫して「被害者」扱いをしていたのもたまらなく嫌でした。確かに時折騙されはしますが、基本的には加害者であり犯罪者です。でもそれも、「点」の部分ではなかったことにされていい話にしようとするわけですね。

よっつめはその物語にも関係するのですが、「見たいものは見せずに見たくないものを見せる」ドラマでした。

もちろんドラマなのですべてを詳細に描く必要はありません。でも、最低限描かなければならないことってあると思うのです。それが全く描けていなかったのではと。

たとえば「子育て」。暢子はお店をオープンさせるときに妊娠し、再開してすぐに出産。そのあとは子育てとお店の経営を両立させていかなければなりません。

でもそんな描写は一切なく、出産した数分後には「そして4年後」とかですっ飛ばされます。

他にも、問題が起きて解決する金曜日。どうやってこんなトラブルを解決するんだろうと思ったら、とりあえず解決する役の人が出てきてうやむやに解決するパターンがほとんど。トラブルで嫌な目にあっている分、たとえば悪役がやり込められたりとかを見てカタルシスを得たいのに、そういう描写が一切なく「この人が登場して解決しました」とナレーションで終わるみたいな感じです。

いつつめは、昭和を描いたとはいいつつも現代の感覚を取り入れているくせに、男尊女卑な部分が出てくるドラマだった点です。

昭和の時代なんですが、令和の感覚がバンバン出てくるドラマだったんですよ。最後のやんばるちむどんどんの料理なんか、昭和の時代にはありえないぐらい少量を盛ったカフェ飯でしたし。

でも、おそらく作者達の根底にあるであろう、男尊女卑な部分がちらちらでてくるんですね。代表的なのが恋愛観でしょうか。

  • 女性は基本的には一度恋をしたらその相手と添い遂げなければならない
  • 男性は急に心変わりをしたり、二度目の恋でも許される

暢子は沖縄の子供時代の初恋相手の和彦をなんだかんだで思い続けて略奪愛まで行いますし、良子も大学時代に勉強会で一緒になった博夫をずっと思います。歌子に至っては小さいころから智にーにーと慕い続けて最後は結ばれます。

一方で男性陣はというと、恋人がいて婚約までしても、なんかもやもやするという理由で別れて暢子と結婚をした和彦、暢子に告白してもフラれたので自分を慕ってくれる歌子に心変わりをした智、出会う人出会う人に一目惚れをしてかっこつけて借金を膨らませたにーにー。

女性陣で唯一、結婚歴があった清恵はものすごい勢いで賢秀になじられるのでした。

 

あとは本当にもう、基本的には「会話」が成立しないドラマでした。

特に序盤から中盤にかけてはコミュニケーションが大声で自分の意見を怒鳴る、だけだったので、会話になっていないことがほとんど。意図的に返答をするシーンがカットされたのか? と思うぐらい、会話にならないことがほとんどでした。

……というわけで、自分に合わないドラマを見続けてみようと思った半年にわたるチャレンジはいったんこれで終わりかなとも。

「むむさんの生きがいが終わってしまった」とか言われたりもしたんですが、本当につらかったんですよ! 本当なんですよ! もう再放送とかあっても見ることはないと思います。本当に!

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