醤油手帖

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日刊SPAと東京MXのひどい記事を読んで、自衛のために「酔いつぶされないためにはどうしたらいいか」を書いてみる

またひどい記事がありました。
こちらのTogetterを参照していただくとわかるのですが。

togetter.com

もともとは日刊SPA!で「女性の“お持ち帰り率”がアップするお酒は? テキーラがNGなワケ」という記事が書かれ、それをTOKYO MXの「バラいろダンディ」という番組で放送されたという経緯です。バラいろダンディでは、その日の気になるニュースをランキング形式で発表するのですが、2016年9月5日放送分で、3位として紹介されていました。

s.mxtv.jp

上記リンクの「3位:お持ち帰り率アップのお酒」です。
特に否定的な紹介をしているわけではなく、長谷川アナウンサーも「続いては、男性が気になるニュースです」というような前振りです。

おりしも同じ日に、女性をモノ扱いにした東大生に懲役2年が求刑されてもいます。

www.sanspo.com

ちょっとだけ脱線しますが、サンスポのこのタイトルだと東大生側が謝罪しているのに受け入れていない、それはよくないみたいな印象を与えますよね。実際にはもっともっとずっとひどい事件で、示談に応じないのもわかるというものでした。

www.iza.ne.jp

言うまでもなく、お酒を無理矢理飲ませてどうこうするというのは犯罪です。togetterの記事中にもある弁護士法人中村国際刑事法律事務所HPをぺたりとしておきますね。

準強姦罪とは、準強姦罪成否のポイント | 刑事事件弁護士

こんな犯罪を助長するような記事を載せるのはメディアとしてどうかとも思います。日本酒のみならず、お酒業界に対する風評被害も大きいでしょう。特に日本酒業界では、女性向けのお酒に対する取り組みも熱心に行っているのです。僕もそういうテーマでお話しして欲しいと酒造組合に呼ばれたこともあったりします。それだけに、本当に許しがたい記事です。

でも、こういう人達へ真っ当に抗議をしてものれんに腕押し糠に釘というか、あまり聞く耳を持ってもらえないというのも経験上ありまして。もてない人(この場合はお持ち帰りできない人)が何か言っているんでしょ、みたいに、価値観が違いすぎるとお話が全く通じないので、とりあえず番組に関してはBPOへ通報するしかないと思います。しました。日刊SPA!の方はどうすればいいんでしょう。

それはさておき。長い前振りでしたが、こういう記事に対しては、「お酒で酔いつぶされないためにはどうしたらいいのか」ということを書いてせめてもの自衛の手段を紹介していきたいと思います。例によって推敲していない殴り書きなので長いです。

■一番いいのは睡眠と水

当たり前といえば当たり前なのですが、睡眠不足は万病の元というか、体調不良の元です。普段お酒を飲んでいても大丈夫な量であっても、2日完徹のときに飲んだらすぐに酔いつぶれて寝てしまうでしょう。なので、お酒を飲むときには睡眠をしっかりとっておくのが一番いいのです。

そうはいっても前日までに準備が必要だし、仕事の都合上どうしても寝不足のときもあるから、これはなかなか難しいことでもあります。

じゃあ当日、その場でできる対応はというと、水を飲むことです。日本酒の世界だと「和らぎ水」といって、酔いを和らげてくれる水を推奨しています。

■なぜ水を飲まないといけないのか

水を飲んだ方がいい理由のひとつは、血中アルコール濃度にあります。ちょっと公益社団法人アルコール健康医学協会のページにある、飲酒の基礎知識の中の、「アルコール血中濃度と酔いの状態」を見てみましょう。

飲酒の基礎知識 −公益社団法人アルコール健康医学協会−

表の一部を引用というか、ちょっとお話上で必要な部分を抜粋します。

爽快期:血中アルコール濃度0.02~0.04%
さわやかな気分になる、皮膚が赤くなる、陽気になる、判断力が少しにぶる

ほろ酔い期:血中アルコール濃度0.05~0.10%
ほろ酔い気分になる、手の動きが活発になる、抑制がとれる(理性が失われる)、体温が上がる、脈が速くなる

酩酊初期:血中アルコール濃度0.11~0.15%
気が大きくなる、大声でがなりたてる、怒りっぽくなる、立てばふらつく

酩酊期:血中アルコール濃度0.16~0.30%
千鳥足になる、何度も同じことをしゃべる、呼吸が速くなる、吐き気・おう吐がおこる

泥酔期:血中アルコール濃度0.31~0.40%
まともに立てない、意識がはっきりしない、言語がめちゃめちゃになる

このように、酔いの状態には血中アルコール濃度が大きく関わっています。これは、すっごく単純化してざっくり言いますと、アルコールを代謝する肝臓には、処理速度があるからです。

たとえば1秒間に10の量のアルコールを処理できる肝臓を持った人がいて。ここに、1秒間に8の量のアルコールが送られてきたら、問題なく処理ができます。ところが、1秒間に15の量のアルコールが送られてきたら、処理しきれなかった部分があふれてしまうわけです。それが脳にいってあれこれ悪さをするのが酔いなのですね。

一度に肝臓に運ばれるアルコールの量を減らすにはどうしたらいいのでしょうか。それは、飲むアルコールの量を減らすか、血中アルコール濃度を減らすかです。つまり、お酒をたくさん飲んだら、それ以上にお水をたくさん飲んで血中アルコール濃度を薄めれば、ひどい酔いの状態にはならないというわけです。

ケーキなどに含まれている微量なアルコールだと、たくさん食べてもそれほど酔っ払わないみたいな経験をしたことがある人も多いでしょう。また、ウイスキーのストレートみたいなアルコール度数40%のお酒とかも、一度に全部飲むのではなく、なめるようにちびちび飲むことで摂取するアルコールの量を減らしているからすぐに泥酔するというわけではないのです。

というわけで、全く同じ量のお酒を飲んだとしても、水を飲むのと飲まないのとでは、血中アルコール濃度が変わるため、酔いの状態が変わります。お酒を飲む目的が泥酔することではなく、味わいを楽しむというのであれば、お酒を飲んだ後にお水をすぐに飲むようにしましょう。そうすることで酔いの状態を和らげることができ、泥酔してお酒の味がよくわかんなくなっちゃうということも防ぐことができるのです。もちろん、泥酔していなければお持ち帰りされる危険性も減ることでしょう。

具体的にはどれぐらいの水を飲めばいいのか。ざっくりとですが、日本酒の場合は飲んだ量の二倍の水を飲む、というのが一番いいと思います。同量じゃちょっと足りないかなとも思います。

というのも、日本酒のアルコール度数は15%から多いだと20%近くにもなります。最近の生酒とか、無濾過生原酒のようなタイプのお酒ですと、アルコール度数は18%ぐらいと思っていいでしょう。飲んだ後に同量の水を飲んだら、合わせたときのアルコール度数は9%です。これでもまだビールの2倍近いと思うと、少しアルコール度数が高いと思いませんか。

飲んだ量の二倍の水ですと、18%の日本酒を飲んだとしても6%まで薄まります。ビールと同じぐらいになると思うと、ちょっといけそうな気がしますね。もちろん、ビールでも結構酔っ払うという人は、もうちょっとお水を増やしましょう。他のお酒でも、この辺のことを念頭に入れておくと便利だと思います。

■お水は意外と飲みにくい

ただし、ここで罠になるのは、お水は意外と飲みにくいということです。


500mlのペットボトルのお水をぐびぐび飲もうとしても、一気に飲むのって意外と難しいですよね。でも、500mlのジョッキに入っているビールはぐびぐびと飲めたりします。

お水の場合はとくに、温度が低いものが腸にすぐに入らないように、胃の出口(幽門)がしまって体内で温める傾向があります。冷たいものが一気に流れ込むとお腹を壊すからですね。なので、お水をたくさん飲むと胃がちゃぽちゃぽしてお腹いっぱいになるのです。

ところがビールとかのお酒の場合、おいしいからでしょうか。胃の出口がゆるみやすく、すばやく腸に送られます。この辺もお酒の種類によって違いがあるのですが、それが飲みやすさ(ドリンカビリティ)という指標で表されていたりもします。飲み続けられるお酒というのは、胃から腸へと素早く送られ、胃が空くから次が飲めるというわけですね。

ここで何がいいたいかといいますと、お水を飲むとお腹がいっぱいになるからお酒が飲めなくなる、というのは正しいのです。でもそれは、デメリットではなくメリットと考えましょう。

たくさんの種類のお酒を飲みたい気持ちはわかりますが、どんな人でも許容量以上のお酒を飲むと酔っ払ってしまいます。なので、お水をたくさん飲むことで物理的にお腹が膨れてこれ以上飲めないという状態になることで、許容量以上を飲まなくて済む、と。あのお酒も飲んでみたいと思ったらまたお店に行くようにしましょう。

■適量とか脱水症状対策とか

ついでにお酒の適量のお話を。平均的な日本人の場合、体重60kgの人で、純アルコール20gを3時間から4時間で代謝するといわれています。

純アルコール20gというのは、アルコールの比重は0.8なので25ml。25mlのアルコールが入っているのは、ビール(アルコール度数5%)だと500ml(中瓶)、日本酒(度数15%)だと180ml(一合)ぐらいですね。

一晩で飲んで、翌朝スッキリと目覚める、つまり全部代謝できるというのは、6時間から7時間ぐらい分です。つまり、アルコール40g。ビールの中瓶2本だったり、日本酒二合だったりするというわけです。

この数値は、体重によって変わります。実は体重が重要なのではなく、肝臓の大きさが重要でして。体重の重い人の方が、その分肝臓も大きくなっているので、アルコール代謝能力が上がるというわけです。はい、私も体重が増えたのでお酒にだいぶ強くなりました。

体重が60kgより少ない人は、一晩で代謝できる量が40gよりも少ない、ということでもあります。というわけで、男性よりも女性の方がお酒に弱いというか、適量が少ないという傾向があるのですね。

もちろんこれには個人差がありますので、全ての人に当てはまるというわけではないのですが、平均値でいうとそうなるというわけです。

もしも可能であるならば、家飲みとかでだいたいの適量を測っておくといいでしょう。一晩で、たとえばビール500ml2本、もしくは日本酒2合、もしくはワインの瓶半分ぐらいを飲んでみて、翌朝がつらかったら自分はそれよりも適量は少ない、翌朝なんともなかったら自分は平均以上に飲めるんだということがわかります。それが頭にあるだけでも、飲みすぎをだいぶ防ぐことができます。

そして、水を飲んだ方がいいもう一つの理由を忘れていました。

脱水症状対策です。お酒を飲むと、水がとにかく必要になるんです。汗とか呼気でアルコールを排出したりするのにも水が一緒に出たりしますし、トイレに行きたくなったりしますし。お酒に水が含まれているからいいじゃんと思うかもしれませんが、実は足らなかったりします。

アルコール度数5%で残りは水分なビールですら、夏場はビアガーデンで脱水症状を起こしてしまう人が必ず出るほどです。ビールだけを飲み続けていてもダメなのですね。

なので、とにかく水を飲みましょう。飲んだ後の1時間後ぐらいにくる頭痛や悪心も、脱水症状であることが多いのです。水を飲んでいればこういった事態も防げます。

もちろん、お持ち帰りされるような、酔いつぶされることも少なくなるはずです。お水を飲むなという男性の人がいたら、もうその人の目的ははっきりしちゃっているので、好みのタイプじゃなかったら途中で切り上げて帰っちゃってもいいなじゃいかなと思います。

お酒は体に負担がない範囲で楽しむのが一番ですよね。

 

もうちょっと詳しく知りたい人は、いつもの白熱お酒シリーズを読んでくださいという〆で終わります。

 

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