醤油手帖

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防波堤に衝突したフェリーに乗っていた記録(乗客も船員も全員無事でした)

2024年6月1日に、姫路港を出港した小豆島行きのフェリー「第五おりいぶ丸」が防波堤に衝突するという事故がありました。

www.kobe-np.co.jp

このフェリーに乗っていたので、そのときの様子を忘れないうちに記憶しておこうというのがこのエントリです。なお、強調しておきたいのですが、我々を含む乗客184名と船員6名には怪我はありませんでした。全員無事だからこそ書けているということはご了承ください。

事故が起きたのは9:55〜56頃

当日は姫路港を午前9時40分発のフェリー「第五おりいぶ丸」に乗り込みました。1Fを車庫とすると、2Fが客室フロアというか、たくさんの椅子やテーブルがあって、くつろげるようになっています。3Fが甲板のようなもので、風を感じながら航行を楽しめるようになっていました。

席を確保したあとは、割とすぐに甲板へ。海の写真やら、遠ざかる港の写真やら、停泊している他の船の写真を撮った後、設備とかを見ながらほほーこれはこうなっているのかと写真を撮るモードになっていたんです。

甲板の進行方向前方側は操舵室があり、そこまでしかいけません。船の写真の3F部分のところですね。なので左舷のところを見ていました。よく見ると、3Fのそのあたりは屋根はあるけど窓がないことがわかると思います。左舷の2つの窓の、すぐ後ろあたりにいたんです。

そこには消火栓と消火ホースがあったり、浮き輪があったりで、甲板まで水を運ぶのはこの管かと感心していました。最近近所で火事があったので、チェックしていたんですね。この写真を撮ったのが、9:54でした。

写真を撮って、スマホを鞄に入れ、ちょっと顔をあげたときに、そばにいた子供が母親に「あれ? 曲がれるの?」と。ふと前方を見ると、操舵室の窓ごしにぐんぐん防波堤と堤防が近付いてきています。

確かにこれは不安に思うよなあ。でも少年よ、大丈夫だ。きっと曲がれるから。あれ、でも、思ったより曲がっている感じがなくない……? 本当に曲がれるの……? と見ていたら。

どーーーーーーーーん!!!

結構大きな音と、衝撃。舞いあがる大量の土埃。
え、ぶつかったの???

どうしよう。目の前っぽいし、とりあえず記録しておこうかな(何かあったときに証拠になるかもだし)、ついでに土埃も写真に収めておこうと、撮ったのがこちらです。土埃はあまり写っていませんね。動揺していたのでちょっともたもたしていたのかも。

タイムスタンプを見ると9:56でしたので、ぶつかったのは9:55〜56と断言してもいいでしょう。

前に見えているのが操舵室とかがあるところです。右側に扉がありますね。ここには「操舵室」と書いてありました。

この窓越しに見える赤い棒みたいなのが灯台で。船の左側がぶつかったというニュースだったんですが、甲板の中ではそこに一番近いところにいたのでした。ああ、びっくりした。釣り人の人達も「おいおい、マジかよ」って顔で船の方を見ていますね。

幸いにして何かを落としたりはなかったし、周囲を見てもみんなびっくりしているけれども転んだりした人はいませんでした。

そしてすぐさま操舵室のドアがバン! とあけられ、血相を変えた船員さん達(3人ぐらい?)が飛び出してきて、階段を駆け下ります。

これ、直前に撮っていた救命船や浮き輪の出番になるのかな……だとしても、指示が無いままパニックになって「救命ボートを出せ!」とか言うのもよくないよな……とりあえず動かず指示を待とう……

そうこうしていると何があったのか不安に思った甲板にいた人達が後ろに集まってきます。左舷で何かあったっぽいとなったら、そりゃ見に来ますよね。そこで、一緒に行っていた漫画家の磨伸映一郎さんとも合流。「知床の遊覧船みたいな事態にならないといいんですが……」と話していました。

船は衝突しっぱなしということはなく、いったん防波堤から離れていきます。そのときに撮った写真がこちら。9:57です。釣り人の人達も心配そうに船と防波堤を見ていますね。

少し離れたけど、このあとどうなるのかなと思っていたら10:05ちょっと前ぐらいにアナウンスが。

「ただいま機関故障によるトラブルが発生いたしました。安全を確認いたしますので、客室で待機してください」

ぞろぞろと2Fに戻る我々。そのとき、避難経路やら何やらを改めて確認しておこうと撮ったのがこの写真です。タイムスタンプが10:05だったので、アナウンスが10:05前ぐらいだったとわかった次第です。

この3Fの緑に塗りつぶされている部分が立入自由の甲板と言っていたところで、そこから伸びている細い通路の先頭にいたんです。

2F客室で席について、どうなるんだろうと話していたら、10:07ごろにアナウンス。

「航行が継続できなくなったので、姫路港に戻ります。お客様にはご迷惑をおかけいたしますが、そこで下船していただくことになります」

まあ、そりゃそうですよね。何かあって途中で沈んだりしたら大変ですし。

どうやら船が水没して我々は救命ボートのお世話になり車は水没して荷物も失われるみたいな最悪の事態にはならなさそうということがわかってきたので、気持ちも落ち着いてきまして。ようやくXに投稿しようと投稿したのがこちらです。10:12でした。

 

下船できたのは11:42頃

その後が長かった。

当然、船員さん達は奔走しまくっているし、船はゆっくりと姫路港に戻っていっているし、甲板に出るのは何かはばかられるしそんな気分になれないしで、席にいるしかできません。

さらには港には割と早めに着いたんですが、降りられるわけでもなく。しばらく泊まっているので、「もしかしたら港の検査をする設備でチェックをしているのかもしれない」「それが終わったらアナウンスがあるのでは」と話していたんですが、どうにも状況はわからないんです。

すると、突然港を出るフェリー。あれ、チェックして異常がなかったから改めて出港かな? と思ったら、そばには他のおりいぶ丸の姿が。そう、同じ時刻に小豆島を出港して姫路港を目指していたフェリーが到着したので、場所を譲っていたのでした。譲るのか〜先に下ろしてもらえたらすぐにそのフェリーの予約をして乗り込めたかもしれないのに〜でもここにいる全員を収容するのは無理か〜。

この辺で、情報があまりにないので、次の予定を立てられなくなっているわけです。とりあえずすぐに下ろされたりしていないから、命に別状はないというか、沈没するわけではなさそう。救急隊員が乗り込んだりしていないから怪我人はいなさそう。しかわからないわけですね。

小豆島のホテルを予約しているし、このままだと当日キャンセルになるのでどうにか小豆島にはいきたい。でも2隻のフェリーを往復させて運航している姫路港ではもう無理ではないか。というか、明日の便も減便になるだろうし、明日も無理ではないか。だとすると、姫路に戻ったら高松まで行って、高松からフェリーに乗るしかない……? 今日の小豆島観光無理じゃない……? そもそも高松からのフェリーのチケットはとれるの……?

それもこれも、下船できないとどうにもなりません。そして、いつ下船できるか目処がたっていないわけですし、アナウンスもその後ないのです。しばらく閉じ込められている我々。11時を過ぎたあたりで気づきました。お腹が空いた!

そう。小豆島に着いてすぐにご飯を食べようとしていたので、朝ご飯はほとんど食べていないし、1時間ぐらいの航行だったので最小限の荷物しか持ち込まなかったし、大量に持ってきた調味料はすべて車の中だったのです。

当然、車庫には危険なので降りられません。そしてスマートフォンの充電が怪しくなったりしたのですが、充電するためのケーブルやらも荷物の中にあったり、このヒマを潰すためのアナログゲームも我々の荷物の中にあったんです。あったんですが、手元にないし取りに行けない! 武器や防具は装備をしないと意味がないぜ!

持ち込んでいたリンゴジュース(行きにJR西日本の駅でも買えるかチェックしていて購入したJR東日本acureのリンゴジュース)は早々に飲み終わってしまいました。

船内の売店は経費削減か何かで開店しておらず、貼ってあった「オリーブ青汁」さえあればこの空腹感を打破できるかもしれないのに、それすらもかないません。幸い自販機は生きていたので、カロリーのある飲みものを購入するしかない、と。

全員の手荷物を確認したら、そこにあったのは「静岡土産なんですが」と言われたうなぎパイ! あと、どうする家康クッキー! これを食べつなぐしかなかったのです。

それで朦朧としていると、11:15ごろに、船員さんが1人か2人、他の席のところで何やら説明をしています。アナウンスじゃなくて、個別に説明する必要があるのだろうかと思っていたところ、どうも一人一人に「緊急時用乗船名簿」に名前やら車のナンバーやらを書いてもらう必要があったので、まわって説明をしているということがわかりました。いや、そういう書類に書いてもらいますってアナウンスして欲しかった……

  • この船で小豆島に行くことはありません。姫路港で降りてもらいます
  • 降りたら払い戻しをしてください。切符を買ったところで行います
  • 振り替えではなく払い戻しになります

ということが判明。

そうして11:30過ぎぐらいに車庫に行くことが許可され、11:42に下船することができたというわけです。

車の位置的には、もっと時間がかかった人もいると思います。2時間の船旅というか、ほとんど動かないで船の中にいるのは安全確認のためとはわかりつつも、ちょっとだけ精神的にきつかったなーもう少し詳しい情報が欲しかったなー。この後の予定を立てたかったので……

その後の我々

ちなみに我々はどうしたかというと。磨伸さんのXに「新岡山港から小豆島という手がある」という情報が寄せられたので、岡山経由を検討。

予約しようとするも、予約は2日前まで。電話しても「予約は2日前までです……」みたいなアナウンスのみ。一か八かで行くしかないかと思っていたら、予約不要で乗れそうという情報も!

というわけで新岡山港ルートにすることにしました。

下船が始まった際に、車は順番待ちが結構発生していたので「人が降りる用の出口で先に降りて払い戻しをした方がいいのでは」と、払い戻し班を結成。即座に降りて人用の出口に走ってもらいました。おかげで払い戻し列の先頭に行くことに成功。並ぶこと無く全額払い戻しの上、1人1000円のお詫び金をいただきました。

払い戻し列の行列で時間をつぶさずに済み、スムーズに姫路港を出発し、道中はトイレ休憩とかなしで(法律を遵守し安全確認を十分しながら)急いで新岡山港を目指した結果、ギリギリで14:00発のフェリーに乗り込むことができ、15:10に小豆島の土を踏むことができたというわけです。

フェリー乗り場の売店も開いてなかったし、フェリー内の売店も開いていなかったので何も食べていないし、事故のおかげと空腹でテンションがおかしくなっていたので「すごい。こんなに手前から堤防を避ける動きを!?」「ひらりと堤防&灯台をかわし、みるみる灯台が小さくなっていく……なんという操船テクニック!」「岡山の操船技術、すごい!」とわいわい騒いでいました。さぞ周りから見ると不審に思われたでしょう……

 

かえすがえすも、もっと大規模な事故になっていてもおかしくなかったんですが、我々乗客にも船員さんにも誰一人怪我がなく、荷物が失われることもなく、失ったのは時間だけということで、こうして振り返ることができたと思います。不幸中の幸いですね。関係者の皆様おつかれさまでした!

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