緊急事態宣言における鴨川定点観測レポート(5/11分まで)
2021年4月25日(日)から京都などに緊急事態宣言が発令されました。期間は5月11日(火)まででしたが、後に5月末まで延長されています。
言うまでもなく緊急事態宣言はコロナ禍における人の流れを抑制し、感染が広まらないようにするためのものです。ですが、その前のまん延防止等重点措置の頃から、人々はもう慣れてしまってあまり人の出が減っていないとか、飲食店が休業しても外飲みをする人が多いと言われていました。
緊急事態宣言が起きると本当に街中から人が減るのか、外飲みの人出も減るのかどうか。ということに興味を持ったため、夜の鴨川を定点観測することにしたのです。
そんな鴨川の模様は日本テレビ系『news zero』でも取り上げられました。
今回は延長前の5月11日まで無事に定点観測を完遂したので、毎日の変化をまとめてみました。一部の写真は前述の記事中にある写真と同じものを使っています。
また、斜めのアングルと縦のアングルがあるのですが、より個人を特定しにくそうな写真を使っています。定点観測なのでデータとしては手元に両方あります。
●鴨川定点観測写真(夜の部)
緊急事態宣言発令前日の4月24日の写真です。かなり人が多いのが見てとれます。川縁に座るだけでなく、道のあちこちで車座になって外飲みをしている人達がいるのも見られます。
緊急事態宣言が出た日であることと、日曜日であり翌日に仕事がある人も多かったのか、ほとんど人がいないのがわかります。
翌日の月曜日も人はかなり少なめでした。京都府が外で飲んでいないか見回りをすると発表したのも大きかったのかもしれません。ですがこの見回りは18時には終わるため、飲食店を出てから改めて鴨川で二次会しようという人達にとっては全く関係がないのでした。
前日に比べると明らかに人が増えているのがわかります。翌日に雨の予報が出ていることと、2日ほど我慢したからもういいかと考えた人が多かったのかもしれません。
28日の京都は大雨でした。そのため、一見すると人がまったくいないようにも見えます。ところが、念のため四条大橋の下へ行ってみると、真っ暗な中にカップルがいました。覗くつもりはなかったし、そもそも真っ暗で人がいるかどうかもわからないぐらいだったのですぐに通り過ぎたのですが、ちょっと気まずかったかも。
4月29日(木)
28日が大雨で、29日も19時ぐらいまで雨が降っていたのですが、そこそこ人がいました。手前のグループは最初は立ってあれこれ相談していたのですが、そのうち座って飲み始めたという感じです。
4月最後の金曜日。19時ぐらいに通り雨があったのですが、それでも人がこれだけいます。翌日から本格的な連休ということも関係しているのかもしれません。
5月1日は夕方に雷雨が合ったにもかかわらずかなりの人がいました。このあと連休が続きますし、1週間近く我慢したしで、今日は飲んじゃおうとなったのかもしれません。三条大橋のところでは、撮影はしていないのですが、太鼓をたたきながら歌って踊っている外国の方のグループと、それを見ながらお酒飲んで騒いでいる方々がいたので、いろいろなお店が閉まっているストレスが限界になり、爆発したのかなとも思います。
5月2日にも小雨が降っていましたが、それでも結構な人がいました。写真の奥の方にも人がいるのが何となくわかるんじゃないかと思います。また、昨日とはおそらく別グループですが、三条大橋のところで音楽をかけて踊っているグループがいました。
5月3日もかなりの人出です。これを撮影し、即データをnews zeroに送ったりしていました。三条大橋のところでは音楽をかけているグループがいました。踊ってはいなかったかも。
5月4日の人出はかなり多かったです。翌日が雨予報なのと、さらには翌日が休みの連休最後の日だからでしょうか。四条大橋から三条大橋まで、等間隔と呼ばれる感覚が広まったり縮まったりしているところはあったものの、まんべんなく人がいた印象です。
一見すると人がまったくいない5月5日の連休最終日。雨も降っています。ですが、念のためと思って土手を歩いてみると、四条大橋の下にも三条大橋の下にも複数グループがいました。
連休明けの5月6日。また人が増えています。この写真を見ると四条大橋近辺だけでもかなり多いのですが、三条大橋の方がもっと人が多い印象でした。
5月7日の金曜日は、四条大橋近辺だと本来の意味での等間隔カップルというか、お話を楽しむカップルが多かったという印象です。三条大橋では飲んでいるグループがたくさんいたので、飲みの場は三条大橋に移ったという感じでしょうか。
とか言っていたら翌日の5月8日にはまたかなりの人が。四条大橋から三条大橋までまんべんなく人がいる感じです。ゴールデンウィーク最後の土曜日ということで、一番集まりやすい日だったんでしょうか。
ゴールデンウィーク最後の5月9日。人は多かったんですが、それでも四条大橋と三条大橋の近くにしか人がいなくて、中間地点はほとんど人がいませんでした。それでも、三条大橋ではギターを弾き鳴らして歌っているグループとかいたりしています。
5月10日は人が多かったんですが、カップルが多く、3人以上で飲む、みたいな感じの人は少なかったです。カップルで川を見ながら話す分にはまだセーフなのかな……とか考えていたら、女性二人組に話しかけている男性を目撃して、この御時世にナンパとかするんだとちょっと驚いてしまったり。
本来ならば緊急事態宣言最終日だった5月11日。こうして見ると人が多いように見えるのですが、人がいるのはほぼ橋の周りだけ、という感じでかなり人出は少なかったです。
こうして見ると、人がいなくなるのは雨が降ったときだけ(それでも橋の下にはグループがいたりする)ということがわかります。
●撮影に関する基本的なあれこれ
基本的には夜の20時過ぎ、20時から21時の間の鴨川を撮影しています。これは緊急事態宣言において飲食店が20時までの営業になっているため、お店を出た人達がもう一杯飲みたい、まだ早い時間だし帰るのがもったいないみたいな感じで鴨川に集まっているのではないかと思ったからです。
撮影場所は主に四条大橋の上。ここから三条側に向かっての北側を撮影しています。京阪祇園四条駅と阪急京都河原町駅の間にあり人の流れが多いことと、お店の明かりがなくても橋の街灯の明かりなどがあるのである程度の写真が撮れそうだからです。
撮影機材はiPhone12miniを使いました。ナイトモードで撮っているので、実際よりも明るく撮れています。また、角度などによって明るさが違うのもiPhone任せにしているからです(サイズ以外はいじっていません)。
●人が増えるとゴミが増える
路上というか土手で飲む人達が増えるとどうなるでしょうか。答えは、ゴミを持ち帰らない人が増える、です。
とりあえずこちらのGoogleマップの切り抜きを見てください。
右側が鴨川。186号線の標識マークがあるのが四条大橋です。人が集まっている土手は、右の鴨川と、その左隣のやや太めの川の間の土手です。四条交番の横に階段があり、降りられるようになっています。緑の点線が人が歩ける道ですね。
そしてこの絶妙な距離に『マクドナルド四条大橋店』があるのです。あとは木屋町通りにファミリーマートがあったりしてお酒を買えますし、左端の『ニキニキ』という和菓子屋さんの隣がリカーマウンテンだったりします。木屋町、先斗町近辺は飲み屋街・花街だったりするので酒屋さんとかもあるというわけですね。
一方の三条大橋近辺はこんな感じです。
右側が鴨川。緑の点線が人が歩けるところなので、三条大橋から直接降りるというよりは、少し南に下ってから行く感じになっています。この真ん中右ぐらいの交点の部分が広くなっていて、人が集まりやすいという感じです。
ポイントになるのは大通りからここへ降りようとするちょうどいいところにローソン三条大橋店があること。お酒をここでたくさん買えます。さらにそこから西には松屋があり、その南には餃子の王将も。ようするに、買い物ができるところがたくさんあるというわけです。
あとはすごく大雑把なくくりで言うと、四条大橋あたりはどちらかというとチェーンではない居酒屋が多く、三条大橋あたりはチェーンの居酒屋が多いという感じです。学生は四条大橋よりは三条大橋あたりで飲むことが多いと思ってもらえたらいいかもしれません。
鴨川にお話だけをしに行くのではない限り、これらのお店(もちろんそれ以外のお店のこともあります)で何やかんや購入し、土手で食べながらお話をし、ゴミを放置する、という感じになるのですね。
では実際にゴミを見てみましょう。写真は早朝に撮影していますが、毎日ゴミ掃除をしている団体さんがいて、三条大橋からゴミを収集するため、それよりも前に三条大橋に行かなくてはならないと気づけなかった途中の日までは四条大橋近辺のデータになります。また、ゴミの写真はもちろんこれがすべてではなく、もっと膨大な数(1日に100枚超えることも)があります。
4月24日の分、みたいな表現になっていますが、これは翌朝に撮影しているためです。4月25日の朝に撮影したのは、4月24日の夜に捨てられた分なので、「4月24日の分」という表現をしています。
●4月24日の分(4月25日の早朝撮影)
橋の下にもゴミはたくさんありましたし、土手にもお酒の瓶や缶がたくさんありました。もちろん、そのほかのゴミもあります。
●4月25日の分
緊急事態宣言初日の4月25日分は、人がかなり少なかったため、ゴミも少なかったです。どちらかというと風でどこかからか飛んできた(もちろんそれが土手にいた人が放置したものの可能性もありますが)ビニール袋などが川に浮いているものが多い日でした。
●4月26日の分
その1は鴨川の中を絶妙なバランスで動かずにいるペットボトルです。おそらくお茶が半分ぐらい入った状態なのでしょう。この日の水量では流されなかったようです。
その2はあらびきスライスサラミの袋ですね。この近くにその3のようにカラスがたくさんいたので、もしかしたら他の場所からカラスによって運ばれたのかもしれません。
●4月27日の分
人が少なかったとはいえ、ゴミはありました。お酒の缶があちこちに散らばっていました。
●4月28日の分
大雨で人がいなかった4月28日の分。もちろんゴミもほとんどありませんでした。鴨川の中でいいバランスで粘っていたお茶のペットボトル(4月26日の分参照)も、雨による水量増で押し流されていったようです。
●4月29日の分
4月29日分は、人は少なかったもののしっかりと飲み食いしている人達がいたので、ゴミもあります。その2はまとめているのはいいですね。ただ、これだけだとやはりカラスが荒らしたりする可能性がありますので、持ち帰って欲しいところです。
●4月30日分
4月30日分その1は、どう見てもマクドナルドパーティーをやった跡ですよね。四条大橋の橋の下で撮影したものです。おそらくは近くのマクドナルドで買ったものでしょう。
その2はパックのおつまみとサッポロビール、デザートにアイスの爽を食べて爽やかな気持ちになって帰った人の放置したゴミだと思われます。爽やかな気分のままゴミを持ち帰って欲しかった……!
●5月1日の分
5月1日の分は、やはりゴミが多かったです。マクドナルドパーティーをやった跡(その1)や、お酒を飲んだ跡などがたくさんありました。でも、一番ひどいのはそこではなく……
三条大橋近辺のゴミです。ここはちょうど、太鼓をたたきながら歌って踊る外国の人達、それを見ながら歌ったり踊ったり飲んだりしている人達がいたあたりです。まあもうそのグループが残したものですよね。
これ以外にもたくさんのお酒の瓶が割れていて、破片がこのあたりに散らばっていました。
●5月2日の分
5月2日分も三条大橋側を。前日に引き続き音楽をかけて歌って踊るグループがいて、こうなっていました。
割れ窓理論というわけではないのですが、5月1日〜2日あたりから三条大橋近辺のゴミがどんどん増えていった印象があります。
●5月3日の分
三条大橋側が大変なことになっていきつつあるのですが、一方の四条大橋側もこんなことになっていました。マクドナルドパーティーはもちろん、階段で飲み食いしてゴミをまとめておいたのがカラス等に荒らされて(あとは夜中に人が蹴飛ばしたもあるかもですが)こんな感じになっています。
その1の奥の方に、その2のゴミがあるのがわかるでしょうか。
もちろん三条大橋側も負けてはいません。
三条大橋側では主に松屋パーティーが開かれているようです。松屋のお持ち帰りのゴミが1日から増えています。いつものところはいつものようにお酒の瓶や缶が積まれていますね。
●5月4日の分
5月4日分の四条大橋の階段は、惨状と呼ぶのにふさわしい状態でした。これはひどいとしか言いようがありません。
おそらく、その1の右側のところにゴミ捨て場があって、ゴミにはネットがかぶせてあるのですが、その上に捨てたか、階段に無造作にまとめたかしてあったのでしょう。それを人が蹴るなりカラスが荒らすなり鳩が荒らすなりしてこのような状態になったのだと思います。
ちなみにそのすぐ下の橋のところでもこんな感じです。マクドナルドパーティーの跡が見えますね。人がかなり増えると、それに比例するというよりは加速度的にゴミが増える印象です。やはり誰かが捨てていると、自分も大丈夫ではないかと思ってしまうからでしょうか。
では三条大橋の方はというと……なんと、京都市指定のゴミ袋にまとめられていました! 近隣の方が見かねてやったのでしょうか。それとも、音楽を鳴らしていたグループが回収したのでしょうか。これを毎日やってくれていれば……
●5月5日の分
5月5日分の四条大橋まわりはこんな感じです。昨晩に雨が降りましたが、そうなると橋の下に人が集まって、橋の下のゴミが増えます。
ということは三条大橋側も、橋の下にゴミが増えるわけです。増えていました。三条大橋の下では夜な夜な松屋パーティーが行われているようです。
●5月6日の分
階段のわきのゴミ捨て場はこんな感じになっています。その近辺にゴミを置いて行く人が多いという感じなのでしょうか。網の上からゴミを投げ入れている人も少なからずいますね。
ただ、たばこの吸い殻の散らばりから考えると階段でたばこ吸いながらマクドナルドパーティーしていたと考える方が自然なのかなとも思います。
5月6日分の三条大橋近辺はそれはひどいありさまでした。連休明けなのに人がかなり増えていたので、それに応じてゴミも増えて治安も悪くなったという感じです。
●5月7日の分
5月7日分は、四条大橋の階段は平和でした。階段で飲み食いをしていた人が他へ移ったということなのかもしれません。
ではそのほかのゴミはというと、お酒の瓶や缶、たばこの吸い殻はたくさんありました。ちなみにたばこ関連は載せていないのですが、毎日一定数あります。箱も吸い殻も。
●5月8日の分
人が増えればゴミも増える。というわけで5月8日分は相当ゴミが多いです。
四条大橋近辺でこんな感じに。階段のところは平和でしたが、それ以外はこういう有様でした。
三条大橋近辺はこんな感じです。その7は三条大橋からさらに上がったところ、北側です。この近くにマクドナルドってあったかな……とは思ったものの、マクドナルドで買ったものを抱えて散歩してから食べたのかもしれません。
●5月9日の分
しばらく平和だったのですが、5月9日分でまた四条大橋の階段がひどいことに!
今回はさらに、カラスがゴミをあさっているところも目撃できました(その3)。やはり、簡単にまとめるぐらいだとカラスに荒らされてしまうようです。人が近くを通るたびにバタバタと羽ばたくとゴミがさらに舞い散らばるという。ここにゴミを放置するとこうなるというのは、ゴミ捨て場にネットがあることから類推できることではあるので、ネットの内側か、はたまたゴミを捨てないということが重要ですよね……
連休最後の日曜日で、三条大橋側は音楽をかけたり踊ったりする人がいました。ということは、こうなるわけです。
三条大橋(三条通)から土手に降りていくときに入る路地に石のベンチがありまして。昨晩はそこで音楽をかけて飲みまくっている人達がいました。
ということは朝になるとどうなるか。こうなるわけです。これが土手側で行われるか、上で行われるかで、5月9日は上で行われたということでしょう。ちなみに2カ所こういうゴミの山があったんですが、これはまだマシな方の写真です。
ちなみにこの日は朝の7時ぐらいにこの近辺をうろうろしていたのですが、まだ飲み続けている(もしくは朝の6時台から飲み始めている?)5〜6人のグループがいました。
●5月10日の分
5月10日の分は、その前日にはっちゃけすぎた人が多かったのか、人が少なくゴミも少なかったです。
四条大橋の階段のところには鳥の羽が散らばっていたので、鴨か鳩がトンビもしくはカラスにおそわれたのかもしれません。
●5月11日の分
緊急事態宣言が一応終わる予定だった5月11日の分は、人が少なかったためかゴミも少なかったです。橋の周りにだけ人がいたので、ゴミも橋のまわり中心にありました。
ただ、三条大橋の周りは相変わらずこんな感じです。
そしてその3の写真に注目を。左下と右上にある茶色のふたつの小瓶なのですが、実はこの小瓶、昨晩の定点観測でこの辺を見たときにもありました。明るい朝に何の瓶か確認をしてみると「エフストリン液」と書いてあります。
「せき・たん」に効くシロップ剤です。
え、そんな、せきが出ているのに鴨川で飲むの?! それはさすがに周りも止めようよ。家で寝ようよ……と、大いに憤っていたのですが、どうも違うのではと何人かの方に言われまして。いわゆる、咳止めシロップを飲んでトリップするためではないかと。そんなことがあるんですね……
●おわりに(データを無償で提供します)
以上が2021年4月末の緊急事態宣言の、最初の期間である5月11日までの分の鴨川定点観測レポートです。
途中から四条大橋はマクドナルド、三条大橋では松屋(今週からは餃子の王将のゴミも増えました)のゴミが多いということは、飲みに行ってその帰りに二次会として利用というよりも、最初から鴨川で飲み食いする人が増えていったのではないかと思います。
緊急事態宣言でお店が開いていない、もしくは行っても黙食をしなければならない。そうなると、密室ではない風通しのいい鴨川の土手で最初から食べればいいのでは。そういう感じでしょうか。そういうグループはお酒があったりなかったりしていますね。
ただこれは素人判断ではあるので、もし本格的にコロナ禍におけるあれこれを研究している方がいましたら、写真やデータを無償で提供いたします。データといっても人の出と、翌朝のゴミの写真と、それらがどのあたりで捨てられていたかということをお伝えするぐらいですが。
冷やかしで欲しいという方はちょっとお断りをさせていただきますが、何かしら活用したいという方には提供いたします。どのように活用するかをお聞きする感じですね。卒論の足しにとか、夏休みの自由研究に使いたい小学生とか、メディアがニュースに用いたいでもかまいません。もちろん無断転載とかはお断りさせていただきます。
また、この辺のことを何か書いて欲しいという依頼も歓迎します。お気軽にご連絡ください。
鴨川定点観測の人としてnews zeroに取材されました
2021/5/3放送の日本テレビ系『news zero』で取材されてリモートな出演をしました。
「お酒飲みすぎでニュース沙汰に?」「お酒ばかり飲んでいるから……」「醤油を飲み過ぎて倒れた?」とお思いの方もいるかもしれません。そのどれでもなく、今回は「鴨川定点観測をしている人」として取材されたという流れです。
ちなみに、ねとらぼさんにも取材されております。こっちの告知忘れてた……
ようするに、緊急事態宣言下で飲食店が閉まっている20時以降に鴨川で飲んでいる人達がいるというのは本当かどうかを観察し、記録に取っていることが取材されたのでした。
インタビューは30分ぐらいに渡って行われたし、動画を撮ってきてくださいお願いしますと言われたので動画レポートみたいなこともしたんですが、出番はほんのちょっとだけでした。というわけで今回はその辺の裏話……ではないんですが、鴨川定点観測についてのお話をちょっとしたいと思います。
●そもそもなんで定点観測を始めたの?
京都の鴨川といえば、岡崎体育さんの歌にもあるように、等間隔に並ぶカップルで有名な場所です。その鴨川で飲んでいる人達が増えているというニュースが、2月に流れてきたのでした。
夜の京都・鴨川で2次会流行 飲食店時短「飲み足りない」、市は「感染の危険高い」|医療・コロナ|地域のニュース|京都新聞
時短営業によってお店が20時までしか営業していない。じゃあ鴨川で飲めば3密のうちの1つは外だし回避できる。と考えたのか、若者が集まって飲んでいる、ステイホームをしていないというニュースですね。
いやいやさすがにそれはないだろう、レッテルを貼るためにやっているのではと思ったのですが、実際に見ないで批判するのも良くないと思い、実際に鴨川へ見に行ったのです。そのときの写真がこちら。
はい、多いです。真冬なのにこんなにもいるなんて……と、衝撃を受けたのでした。
その後、京都市はまん延防止等重点措置の対象都市になり、さらには緊急事態宣言も出そうだと。それで4月22日に見に行ってみると、前よりも多い!
さらに4月24日、緊急事態宣言の前日に行くと、これがもうびっくりするほどさらに人出が増えていたわけです。これが緊急事態宣言になるとどうなるのか。人の動きは緊急事態宣言で変わるのか。ということに興味を持ったので、定点観測をすることにしたのでした。
●実際の流れを見てみたい!
というわけで、緊急事態宣言の出る前日から5月3日までの写真を見てみましょう。どれも鴨川の四条大橋から、20時〜21時の間に撮影したものです。途中から斜めの構図が増えるのはそっちの方が奥まで人がいることがわかることに気づいたからです。
緊急事態宣言の前日ということと、土曜日ということもあり、相当な人が鴨川で飲んでいました。この写真がバズったりしたのがきっかけで取材をもろもろ受けるようになります。
緊急事態宣言が出たので、だいぶ人は少なかったです。
この日もそれほど多くはありません。また、京都府が外飲みする人達に注意する見回りを行うと発表していました。その影響もあるのかも?
でも見回りは18時ぐらいに行って、20時の飲食店が閉まったあとはやっていないらしいですね……
前日よりも少し増えた感があります。お酒を飲んでいるかどうかはちょっと遠目だとわかりませんでした。ですが、お酒は飲まれていたようです。
大雨の土砂降りで、さすがに誰もいないだろうと思ったのですが定点観測ということで行ってみました。確かに土手にはいなかったのですが、念のために橋の下に行くとそこにはカップルが!
前日から雨で、さらにこの日も19時ぐらいまでは雨が降っていたはずなのになんだかんだでグループが複数いるという。でも距離が離れているからいいのかなー。橋の下にもグループがいました。
さすが金曜日。人が増えています。この日は19時ぐらいに通り雨があったのですが、それでもたくさんいました。
夕方に雷雨があったにも関わらずかなりの人が。さすが土曜日です。ちなみになんですが、この日ぐらいから三条大橋のあたりで歌って踊って飲んで大騒ぎをするグループが見受けられました。
小雨がパラパラと降ってきていたんですが、そこそこの人数がいました。この写真を見ても、奥の方に人がいて手前側よりも間隔が狭い感じなのがわかると思います。この日も三条大橋のあたりで音楽をかけながら踊って飲んでいる人達が……
この日もかなり多かったです。日中から天気が良かったからでしょうか。三条大橋のあたりで音楽をかけている人達もいました。
●路上飲みが増えるとどうなるのか
路上というか土手で飲んでいる人達が増えれば増えるほど何が起きるのでしょうか。もちろんコロナのリスクが高まるというのはあるのですが、直近で目に見えるところではゴミが増える、です。
25日の朝(つまり24日の夜に捨てられたもの)から、早朝にも鴨川を散歩して、ゴミを記録することにしてみました。当たり前なんですが、前日に人が多いとゴミの量も増えます。
写真では2枚ずつぐらい載せていますが、多い日だとゴミの写真が100枚を超える日があったりしています。あと、あえて載せていないんですが、たばこの吸い殻ポイ捨ては毎日たくさんあります。
橋の下にもゴミがあるし、土手にもゴミがたくさん。お酒の缶や瓶だけでなく、何かしら食べた跡もたくさんありました。
さすがに人が少なかったのと、飲食をしている人が少なかったのか、ポイ捨てというよりは風で飛んできたようなゴミがほとんどでした。
あらびきスライスサラミの袋が……
この日は目立ったゴミがこれぐらいでした(あとは吸い殻等)
遠目ではお酒飲んでいるかわからなかったものの、いざ朝見てみるとビールの缶などがあり、お酒を飲んでいたことがわかります。また、風のせいか土手と川の境目ぎりぎりにゴミがたまっているのも見られました。
大雨で人がいなかったのでないかなーと思ったのですが、橋の下のカップルがいたところではなく、誰もいないように見えたところにフォークが。風で飛んできたのでしょうか。
ゴミをまとめればいいというもんではないとは思うものの、まとまっているのはいいですよね。あともう1ステップ、持ち帰るところまでやってもらえればと思います。
もちろんそれ以外の場所にたくさんゴミはあるし、お酒の缶や瓶、お茶などのソフトドリンクのペットボトルなどもありました。
ちなみに四条大橋の近くにはマクドナルドがあるので、特に橋の近辺はマクドナルドでテイクアウトしてきたゴミもかなりの頻度で見かけます。
ダンボールはお尻に敷いていたのでしょう。通り雨がありましたし。でもまあ、そのままにしないでもともとあった場所に返すとか、処分するとかして欲しいものです。呪術廻戦グッズが泣いていますよ!
三条大橋のところで音楽や踊りの集まりが行われるようになるとどうなるか。それはこの瓶缶の山が物語っています。ちなみにこの近辺はワインの瓶が何本か割れていて、ガラスの破片がたくさん散らばっていました。犬の散歩させている人もいるのに……
川の中の写真はもうちょっと上流で撮ったものです。出町柳の方が近い感じですね。news zeroで採用された写真なので載せてみました。
三条大橋のところは1日から毎朝こんな感じになっております(執筆時点)
ちょっと無法地帯になっちゃっている感がありますよね……それに比例して、三条大橋近辺のゴミも増えてきている印象があります。
その1は四条大橋から土手へ降りる階段です。この隣が交番なんですが、ここ数日は毎日こんな感じです。階段に座って飲み食いしている人が増えたのかもしれません。
その2は三条大橋の松屋パーティーの跡。三条大橋の近くには松屋がありますので、そこでテイクアウトしてきたんでしょう。
そしていつもの場所はいつもの通りでした。
●記録をとって何をやりたいの?
誤解されると困るのですが、こういう記録を撮っているのは別に若者を糾弾したいとか、京都の人達の民度がどうとかを言いたいというわけではありません。実際のところ、これは全国の観光地や繁華街でいま起きていることだと思います。news zeroで放映されていた江ノ島の昼間も相当な人出で密と言える感じでしたが、それと比べてどうこうとか言いたいのではありません。
コロナ禍で緊急事態宣言中という中で、実際に人がどのように動くのかという好奇心から始めたのです。それが今は、どんな感じで人が動いていたかということを記録に撮りたいと思ったのでした。まあでも、ゴミは持ち帰って欲しいなーとは思います。
とりあえずは緊急事態宣言中は続けようと考えています。宣言が延長されたら……どうしましょう。まだ考えていません。
●データを無償で提供いたします
というわけで、もし本格的にコロナ禍におけるあれこれを研究している方がいましたら、データを無償で提供します。データといっても、基本的には人の出と、翌朝のゴミの写真と、それがどのあたりで捨てられていたかということを伝える感じですが。
冷やかしで欲しいという方はちょっとお断りさせていただいて。何かしら活用したいという方には提供いたします(どのように活用するかお聞きします)。それこそ卒論の足しにとか、夏休みの自由研究に使いたい小学生とかでもかまいません。メディアがニュースに用いたいというご依頼でも大丈夫です。お気軽にご連絡ください。
●蛇足
また、こちらは私事といいますか。京都に淡口醤油のためと観光したいために引っ越して6〜7年になるのですが、その「住んで頻繁に観光をしている観光客目線」で見たここ数年の京都に関する本を書きたいなーと考えて、実際にステイホーム中に書き進めております。鴨川定点観測をしているときに、何かせっかくだから記録にまとめたいなと思ったのでした。
インバウンドが始まる前、インバウンド中、インバウンド後、コロナ禍と常に観光していてなかなか貴重な体験をしているなと感じています。発表する媒体とかを考えずにある程度適当に書き進めているのですが、もし興味をお持ちの出版社さんや編集さんがおりましたら、あとはそこまでいかなくてもとりあえず企画書ができあがったら見せて欲しいという方の連絡もお待ちしております。
緊急事態宣言下で知りたい「お酒は日持ちするのか」問題について
緊急事態宣言が発表され、「仕方なく」モンスターをハントする仕事に従事していたら仕事仲間からこんな質問をいただきました。
「お酒って日持ちするの? しないの?」
確かに緊急事態宣言によってお店でお酒が飲めないという事態になっていますので、家で飲みたい。でも、実際に買ったお酒を飲みきれるかどうかというのは非常に難しい問題です。余ってしまったら処分しなければならないのか、悩みますよね。
また、緊急事態宣言が明けてお店に行って飲むお酒が宣言前のものなのかどうか、そしてそれを飲んでいいのかどうかと考えるのもわかります。
というわけで今回はお酒が日持ちするのかどうかをなるべくわかりやすく、かつ詳しめに(でも詳しくなりすぎない程度に)説明していきたいと思います。
なんか長くなったので目次機能というのを使ってみます。うまくいくかな。
- ●お酒は放っておくとダメになるの?
- ●お酒が変化して飲めなくなるのはたいてい微生物の仕業
- ●実際のお酒ではどうなの?
- ●お酒は放置するとお酢になるのでは?
- ●ここまでのまとめ
- ●微生物以外でお酒が変化する要因は?
- ●お酒の変化はさせない方がいいの?
- ●まとめ
- ●最後に宣伝!
●お酒は放っておくとダメになるの?
まずはお酒は放置しておくとダメになるか、そもそもダメになるというのはどういうことか、というポイントから説明していきます。ここをしっかりとさせないとお酒に関してはお話がややこしくなるのです。
時間が経つとお酒がダメになるというのは大きく分けると2通りあります。
- 飲めない状態(飲むと人体に害があったりする)になる
- 人体に害はないけれどもおいしくない
このうち、1は非常にわかりやすいでしょう。カビが生えたりして人体に有害な物質を生成されたりすると、それはもう飲めません。いわゆる腐ってしまうというのもこの状態ですよね。
2は、本来味わえる味とは異なる状態になり、さらにその状態が好ましくない状態になることです。人体に害はないけれども、味としてよろしくないので飲みたくない=ダメになったというわけですね。こうなってしまってはなかなか飲みにくいので、直接飲まない料理に使ったりすると良かったりします。
まずは1の問題について解説していきましょう。
●お酒が変化して飲めなくなるのはたいてい微生物の仕業
これはお酒に限らないことなんですが、ものが腐ったりするのはほとんど微生物の仕業です。カビとか腐敗菌ですね。これらが食べ物を分解したときに出す毒素によって、ときには食中毒になったりします。
こういった微生物も生き物ですから、生きていくにはいくつか必要なものがあります。それが水分や栄養です。
たとえば塩漬けや砂糖漬けといった保存食は水分を徹底して奪うことで保存性を高めています。塩などの浸透圧によって微生物の水分を奪い、微生物が死滅するという原理です。
残念ながらお酒は水分が豊富なので、これをなくすことはできません。その代わり、アルコールがあります。アルコールには殺菌作用があるため、ある程度以上の濃度だと菌が生きていけないのです。コロナ禍でもコロナウイルスを退治するためにアルコール度数70%ぐらいのもので消毒をしていますよね。
お酒をダメにしてしまう菌が繁殖できない濃度はどのくらいなのでしょうか。
これは、花王さんの資料がわかりやすいかなーと思います。
https://www.kao.co.jp/pro/hospital/pdf/08/08_05.pdf
右側のメカニズムのところを見るとわかるのですが、静菌作用(菌が生育しにくい)は低濃度でも、8%より高いと時間さえかければだいたいなんとかなる感じです。
もちろんこれは菌によっても違いますし、中には火落菌という清酒をダメにする菌のように20%でも生きて増殖する菌もいますので、全部がこうというわけではないのですが、それでもある程度の濃度があれば雑菌は繁殖しにくいと考えればいいでしょう。
ビールは5%なので殺菌という面では弱いのですが、ワイン(12%)や日本酒(15%)だとほとんどの菌が育ちにくい。ただし殺菌には時間がかかるので、すぐ消毒したい場合に使えるわけじゃないというわけです。
そしてもうひとつ生育に必要な「栄養」。これは菌によって食べるものが違うのですが、だいたいは我々が食べるものと近いと思うといいです。我々にとって栄養になるものは菌にとっても栄養となるのですね。
お酒に栄養はどのぐらい入っているのか。もちろんお酒によって違うのですが、「醸造酒」と「蒸留酒」で大きく分けることができます。
簡単に言うと、お米やブドウや麦芽を発酵させて造るのが「醸造酒」。
その醸造酒をさらに蒸留してアルコール度数を高めたのが「蒸留酒」です。
お米を発酵させると日本酒、ブドウを発酵させるとワイン、麦芽を発酵させるとビールになります。これらはそのお米やブドウの栄養分を豊富に含んでいるのも特徴です。それが味に深みを出し、コクを生み出しているのですね。
一方で焼酎やウイスキーといった蒸留酒は栄養素がほとんど含まれていません。蒸留する過程で余分なものはどんどん取り除かれてしまうからです。その分、アルコール度数を高めて、香りなどを楽しむお酒になっているというわけです。
●実際のお酒ではどうなの?
各お酒の大雑把なアルコール度数ですがこんな感じで考えるといいです。
- ビール:5%前後
- ワイン:14%前後
- 日本酒:15%前後
- 焼酎:25%前後
- ウイスキー:43%前後
ビールは度数が低いので、この中では一番雑菌に弱いと言えるでしょう。特に樽のビールは要注意です。ビールサーバーの洗浄が大事というのも、(醸造酒なので)栄養豊富でアルコール度数が低いから雑菌がわきやすいからなんですね。
ワインや日本酒は雑菌には比較的強いです。でも栄養豊富なので、開封したら早めに飲む方がいいですね。
焼酎やウイスキーは蒸留酒で栄養がなく度数も高いため、雑菌には非常に強いです。ちょっとずつ時間をかけて、何日にもわたってちまちま飲んでいっても大丈夫というわけです。
●お酒は放置するとお酢になるのでは?
ここで意外と多い「お酒って放置しておいたらお酢になっちゃうんじゃないの?」ということも解説しておきましょう。
お酢は「酢酸菌」という菌がアルコールをさらに発酵させて造ります。
したがって、お酒に酢酸菌が入り込むとそのうちお酢になってしまうのです。
ただしこれにはいくつかの条件があります。
ひとつは、未開封のお酒はお酢にならないということ。当たり前ですが酢酸菌が入らなければお酢になりようがないので、未開封で密封されているお酒はいくら放置していてもお酢になったりはしません。これはビールだろうとワインだろうと日本酒だろうと、そのほかのお酒でも同じです。
次にアルコール濃度。
アルコールには殺菌作用があるため、アルコールを食べる酢酸菌といえども、ある程度以上の濃度だと逆に退治されてしまってお酢になりようがないのです。具体的には、お酢を造るときにはだいたいアルコール度数5%ぐらいで行います。高くても10%ぐらいで、それ以上もできなくはないのですが、ちょっと特殊な製法と設備が必要になります。
つまり、アルコール度数10%以上のお酒は酢酸菌が入り込んでも、普通に放置していたらお酢にはならないのです。ましてや蒸留酒がお酢になるということはありえません。
あとは温度も重要です。酢酸菌も生き物ですから、快適に過ごせる温度帯があります。具体的には40℃以上の環境だと活動が弱まり、発酵が弱くなる性質を持っているのです。さらには60℃以上だと死滅してしまいます。
一方低い方の温度はどうかというと、20℃以下になると発酵が弱まる性質があります。つまり、20℃〜40℃の間に保たなければなりません。
そこまでして、ようやくお酢ができあがるのです。したがって、市販されているお酒を放置していてもお酢になるということはほぼないと言えるでしょう。
ちなみにどうしてお酒を放置しているとお酢になるというイメージがでたかというと、主に日本酒が原因だと考えられています。日本酒の高いアルコール度数でも活動できる火落菌という乳酸菌の一種は、お酒の中で活動して独特の酸味と臭いを出します。この酸味が、あるため、放置していて火落菌が繁殖してしまったお酒は酸っぱくなる=これはお酢になったに違いない! という発想に結びついたのでしょう。ただしこれはもちろん酢酸菌ではないので、お酢ではない、というわけです。
●ここまでのまとめ
- お酒は微生物によって変化することがある
- 腐敗菌などが増殖すると人体にとって害になる
- 醸造酒でアルコール度数が低いと雑菌が繁殖することがある
- 蒸留酒は基本的には雑菌が繁殖しない
- 未開封で密封されていれば雑菌が入り込まないため変化はしない
つまり、未開封で保存をする分には人体に害となるぐらいに飲めなくなるということはまずないと考えてください。ある程度以上のアルコール度数、まあようするにワインや日本酒などでしたら基本的に「賞味期限」はありません。害になって飲めないということがないからです。
開封してしまった場合でも、注ぎ口が清潔であり、菌が活動しにくい温度帯で密封して保管すれば割と大丈夫です。冷蔵庫に入れておくといいというわけですね。
●微生物以外でお酒が変化する要因は?
ここまでが主に「菌」の話でした。こちらの1の問題ですね。
- 飲めない状態(飲むと人体に害があったりする)になる
- 人体に害はないけれどもおいしくない
次は、2の話をしていきましょう。
お酒はさまざまな要因で味わいが変化する可能性があります。
その変化が飲む人にとって好ましい味わいだったらそれを「熟成」といい、あまり好ましくない、端的に言っておいしくない変化になってしまったらこの「2」のケースになるというわけです。
お酒の味わいが変化するのにはいくつかの要因があります。列挙するとこんな感じです。
- 空気(酸素)
- 日光(紫外線)
- 温度
- 振動
- 時間
『白熱日本酒教室』でもこのあたりには触れていますが(宣伝※1)、もう少し詳しく見ていきましょう。
●空気に触れるとお酒はどうなるの?
空気に含まれている酸素は我々にとってなくてはならないものですが、同時に猛毒でもあります。さまざまな物質を酸化させて変質させるのです。金属でもサビてしまうのですから、食べ物だってひとたまりもありません。
そのため、密封されていれば変化はしないけれども、開封した瞬間からお酒は変化していくことになります。一瞬でも空気が入ればその瞬間から変化していくということですね。醤油業界をはじめとして空気に触れない容器が開発されているのも、主にこれが理由です。
日本酒の瓶を冷蔵庫などに保管する際には立てて保管する方がいいというのも、空気に触れる面積を少なくするためです。やってみるとわかるのですが、立てているときと横にするときでは空気に触れる液面の大きさが段違いなのですね。
一方ワインを横にした方がいいのは、主にコルクの問題です。コルクは植物製であり、乾燥すると縮んでしまう性質を持っています。そのため、縮んで隙間ができるとそこから空気が入って劣化する可能性があるのです。
そこでコルクが乾燥しないように瓶を横にして、常にコルクを湿らせた状態にしているというわけですね。スクリューキャップの瓶でしたら縦に保存していてももちろん問題はありません。
蒸留酒は醸造酒に比べるとわずかではありますが、やっぱり酸化します。酸化する成分が概ね蒸留で取り除かれているものの、残っているというイメージです。
●日光に触れるとお酒はどうなるの?
日光の紫外線というのは非常に強力で、いろんなものを分解したりします。服についたカレーのシミだって、日光に当てれば分解されてきれいになることがあるのです。
というわけでお酒も日光は厳禁。これは醸造酒だろうと蒸留酒だろうと変わりありません。日光臭という、ちょっと独特の臭いがするようになってしまいます。
お酒の瓶が茶色や黒色だったり、缶に密封されているのは主に日光の対策です。ちなみに、紫外線は蛍光灯や水銀灯にも含まれています。お酒にこだわりのある酒屋さんなどでは、やや暗めの照明だったり、博物館等で使われている紫外線を出さない蛍光灯に切り替えたりしているところもあるぐらい、光対策には気をつけているというわけです。
●温度が変化するとお酒はどうなるの?
温度は非常に重要です。まず、温度が高いといろいろな化学反応が促進されると覚えておいてください。ということはお酒の変化も促進されるということです。
この変化が促進された結果、たとえば日本酒では老香(ひねか)と呼ばれる香りが出ることがあります。これがいわゆるオフフレーバー(好ましくない香り)にあたるため、出ない方がいいというわけです。
また、極端に温度を上げ下げするのも影響します。
そのため、お酒は冷暗所に保管するのがいいのです。適度にひんやりしていて温度が上がらない、光の当たらない場所というわけですね。
●振動が加わるとお酒はどうなるの?
お酒は振動によっても変化します。たとえば超音波でお酒の熟成を進める機械について聞いたことがある人もいるでしょう。これは微細な振動を加えることによって、熟成したのと同じ効果を生み出しているのです。
それ以外にも、乱暴に運ぶとお酒の瓶や缶の中に入っている空気がお酒と混じり合うこともあります。
また、振動が加わるとお酒の中に溶け込んでいたものが外に出やすくなったりします。これは炭酸ガスが含まれているビールに振動を加えたらどうなるかを考えるとわかりやすいでしょう。大変なことになってしまいますよね。
同様に、お酒の中により一層溶け込む物質もあったりします。水に塩を入れてかき混ぜるとよく溶けるみたいな感じです。
つまり、振動が加わるとお酒の性質は変化する可能性があるということです。
●時間が経つとお酒はどうなるの?
そして「時間」です。これは非常に難しいのですが、たとえば○年物のお酒とか、長期間保存しているお酒にはそのお酒にしか出せない風味がありますよね。前述の振動でそれを早めることもできる場合もあるのですが、なかなか難しかったりします。
時間が経つとお酒の中にあるさまざまな成分が結合したり、離れたり、空気があれば酸化したりします。水とアルコールだけでも、互いがよくなじんで口当たりがまろやかになったりするのです。その中で一番大きな影響を与えるのは、「アミノ酸」と「糖分」による化学反応。メイラード反応(アミノカルボニル反応ともいいます)といって、メラノイジンという物質が生成されます。
このメラノイジンが褐色なので、増えれば増えるほどお酒は褐色に近付いていくのです。熟成すればするほど紹興酒の色に近付くと考えるとわかりやすいかもしれません。たくさん増えると最終的には醤油の色合いになります。醤油の黒色と、熟成酒の色は同じ色だったというわけですね。
この反応は温度が上がると促進されます。10℃高くなればスピードは2倍になるのです。なので、温度が高いところで保管しているとどんどん色が褐色になっていくのですね。温度が低いとこの変化がゆるやかになるだけで、ものすごい長期間保存していればやがて褐色に近付いていきます。
ちなみに日本酒だと、清酒造りの段階からこの反応はおきています。蔵でしぼっている最中の日本酒は、うっすら山吹色をしているのです。それを炭濾過などによって透明にして販売されているのですね。
そしてまた時間が経てばうっすら山吹色になり、褐色に近付いていくというわけです。その辺のお話に関しては宣伝(※2)がありますので後で目を通していただけたらと!
●蒸留酒は変化するの?
アミノ酸や糖分があるとメイラード反応が起きるのですが、なければ変化は起こしません。つまり、蒸留酒はそれらの成分が蒸留によって取り除かれているので、時間が経っても変化しないのです。
そうはいってもウイスキーは見事な褐色ですよね。
あれはメイラード反応ではなく、保管している樽の色が出ているのです。ウイスキーは蒸留したてのころ(ニューポットといいます)は透明なのですが、内側を焦がした樽に入れて熟成させます。すると、アルコールと水がよくなじみ、同時に樽の香りや色がお酒に移り、あの色合いになるのです。
そのため、瓶に入っているウイスキーはいくら保管してもメイラード反応による変化は起こりません。山崎12年を5年間保存していても、山崎17年の味にはならず、5年間保管した山崎12年になるのです。
泡盛の古酒はこれともまたちょっとだけ違っていて、どちらかというと化学反応です。メイラード反応は起きないのですが、含まれているさまざまなアルコール成分や有機リン酸が反応して、複雑な香りを生み出したりするのです。もちろんアルコールと水がよくなじむという変化も起きています。
●お酒の変化はさせない方がいいの?
お酒は基本的には造り手側がこのバランスでおいしいと思ったときに出荷されます。したがって、お酒に変化が起きてしまうと造り手側の想定外の味わいになってしまう可能性があります。変化させないように保管して、開封したら早めに飲んだ方がいいというのは非常に正しいといえます。
一方で、お酒は嗜好品です。
変化させた方が、自分にとって好ましい味わいになることもあるのです。
なので、開封して飲みきれなかったお酒は処分するのではなく、また次に飲むときにちょっと味見をしてみるのをおすすめします。蒸留酒だと変化は少なく、緊急事態宣言がきちんと2週間ぐらいで終わればその間はおそらく大丈夫です。もちろん、適切に保管すればですけれども。そして、醸造酒でも飲んでみたら思わぬ味わいになっているかもしれません。
どうしても好みの味から遠ざかってしまったら、料理に使ったりすることで無駄にはならなくできます。
●まとめ
だいぶ長く語っていきましたが、なんとなく覚えておいて欲しいことは以下の点です。
というわけで、緊急事態宣言でどこにもいけず、お店でもお酒が提供されなくなってしまったいま、お酒を買ってみませんか。昨年は消毒用のアルコールが足りないということで頑張ってお酒を造っていたのに、今年は急に悪者になってしまいました。その恩返しに、1本でも2本でもお酒を買ってみてはどうでしょうか。
こちらのまとめは実に素晴らしいと思います。
●最後に宣伝!
宣伝1は拙著『白熱日本酒教室』です。
もともと新書版があり、それを漫画にしました。漫画版は今でもWeb上で無料で全部読めます。お酒の変化の要素についてはこの辺かな?
まあ、そのまま最初から読めたりもします。
新書版は最近電書化されたのでKindleでも読めます! 何かしらのセールのついでに買うのもいいんじゃないかな!!
漫画版ももちろんコミックスで買えます。電書でも紙でも!
宣伝2は、浅野りん先生の漫画『であいもん』です。祝! アニメ化決定!
和菓子の漫画なのですが、ちょーっとだけお手伝いをしていまして。具体的には作中に出てくるお酒のセレクトとかをしていたりします。
たとえば2021/5/1発売の11巻に収録されている53話『八重に山吹く』では、このお酒が熟成して山吹色になるということと、山吹という和菓子がテーマになったお話です。そこにさらにお酒の神様である松尾大社をお話に絡めるということで、松尾大社とも縁が深い松井酒造の『神蔵』というお酒を紹介したのでした。
で、あとがきにも登場しているんですが、なぜかピカチュウっぽい格好をしているのには理由がありまして。数年前に2時間ぐらいしか寝ないでお花見に行った際に、疲労と酔いで一升瓶をかかえたままというか寄りかかって寝てしまったことがあるのです。そのときの様子が「しわしわのピカチュウみたい!」となったので、そういう絵になったという……
果たしてピカチュウな感じとはどういうことなのか。気になる人はぜひ単行本で!
2021年4月17日(土)CBCテレビ『ちょい足し』に出演します
愛知・岐阜・三重で放送されている、CBCテレビの魔法のワンスパイスバラエティ『ちょい足し』に出演します。
出演といってもあれです。スタジオに出てあれこれではなくて、リモートで出演するやつです。
そう! リモートなんですよ!
すごかったのはこちらはMacBookAirがありますが……って言ったら機材が一式送られてきたことです。この機材を使ってくださいね、と。しかも消毒用のアルコールジェルも厳重に漏れないよう梱包されて届きました。
当日はそれを組み立てて、インターネットを通じて質問に答える感じです。あ、醤油の話。醤油の話をしております。
実際にリモート出演して、最近のテレビで疑問に思っていることがちょっとわかりました。リモート出演の方、よくよく見ると目が合わないというか、テレビの方を向いていないで少し視線がズレていることが多いですよね。
あれはつまり、撮影用のしっかりとしたカメラにはリモートで話す機能がついていないため、iPadとかを使ってトークをするのですが、実際に映像として使われるのはカメラの方だからだということがわかりました。
こちらはiPadの方を向いてしゃべっているし、それでスタジオ側と目は合うような感じになるのですが、実際には少しだけずれた場所にあるカメラの映像が使われているので少し視線が定まらないというわけです。
これで困ったのは、「この醤油です!」と醤油を見せるときに、最初はカメラの方にしっかり合わせればいいのかなーって合わせたらスタジオ側から「すみませんちょっと見えません」と言われたりしたのでした。難しい。
まあ、そういう難しさも含めて、ちょっと面白い企画で出演しているはずなので、愛知・三重・岐阜の方々は4月17日(土)17:00よりの『ちょい足し』をよろしくお願いします。
2021年4月10日放送『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』の誤解をまねきそうな点について
2021年4月10日放送のテレビ番組、『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』(NHK)は、「日本が誇る調味料!しょうゆのお金の秘密」という醤油の特集でした。
番組内で、間違いではないんだけれども誤解をまねきそうだなーという表現があったのでちょっと整理しておきます。なお、NHKの放送ですから以下のメーカー名等は明記されていません。見る人が見ればわかるという形になっています。
問題となるのは「醤油の歴史に残ると言っても過言ではない、生醤油の発明」のお話です。ここで生醤油をヒットさせたメーカーとしてキッコーマンの方がカネオくんのインタビューに答えています。
「生醤油」とは醤油造りの工程のうち、「火入れ」という加熱殺菌をし、色や味を最終的に調える工程を省いたものと紹介されました。加熱殺菌をしないでも、フィルターを使って微生物を漉すので大丈夫だとしっかりと言われています。ここまでも少し微妙ではありますが、もうちょっと微妙レベルが上の発言が次に出てきます。
この「生醤油」実現の決め手になったのが「空気に触れないボトル」なんですという発言。ここがちょーーーっとだけ、醤油全体のファンとしては悩ましい紹介の仕方をしていたのです。
もう少し詳しく掘り下げていきましょう。
番組中ではこのように紹介されていました。お金の話の番組なので。
「登場から6年、2016年にはこのボトルを使った醤油シリーズの年間売上は100億円以上に」
ここに、少しだけ嘘というか、真実ではない部分があるのです。
ややこしい話になるので順を追って説明していきましょう。なお、これは重箱の隅をつつきまくる行為であり、わかりやすさを重視するためにテレビの限られた時間での表現であるということは重々承知の上での行為です。
●空気に触れない容器はキッコーマンの発明ではない
醤油における「空気に触れない容器」を最初に市販化したのはキッコーマンさんではありません。ヤマサ醤油さんの「鮮度の一滴」シリーズこそが一番最初なのです。あのシャンプーの詰め替えボトルのような、パウチタイプで空気に触れない容器に包まれた醤油を見たことがある人も多いでしょう。2009年8月より首都圏を中心に販売を開始し、2010年2月より全国に販売を拡大しています。
これがプレスリリースです。大手さんはプレスリリースがしっかりと残っているのがいいですね。
ではキッコーマンさんはどうしたのか。
同じく空気に触れない容器の醤油を2010年に販売します。
これがプレスリリースです。
ここでプレスリリースに載っている画像をよく見てください。ちょっと拝借してぺたりと貼ります(自前の写真がどこかにあったはずだなと思ったんですが、見つからなかった……)
そうなんです。最初はキッコーマンさんもパウチタイプで空気に触れない「しぼりたて生」シリーズを出していたのですね。
鮮度の一滴は、醤油の注ぎ口を薄いフィルムが重なる構造にしていました。そこに毛細管現象という、細いところに液体が入り込む現象を利用して、醤油そのもので空気が中に侵入するのを防ぐ仕組みです。容器を傾けて醤油が口にたどりつくと、液体の重みで口が少し開いて醤油が注がれるという構造でした。
一方のしぼりたて生は、それだと倒れたときに醤油がこぼれてしまうということからか、蓋がある方が万が一のときに安心だろうと蓋をつけているのが特徴です。
これはパクリとかではなく、当時キッコーマンさんに話を伺ったところ、うちも空気に触れない容器については研究開発をずっと進めていた。たまたま先を越されてしまってとても悔しい、と言っていたのを覚えています。
●いまの二重構造ボトルは2011年に販売されている
というわけで、2009年から2010年の間は基本的にはパウチタイプの空気に触れない容器で醤油は販売されていました。この時点で鮮度の一滴は大ヒット。販売から半年で100万本を超える売上をたたき出しています。
ただ、パウチタイプにも欠点はありました。それは、使っているとだんだんパウチがほっそりとしてきて、倒れやすくなってしまうのです。そこを解消するために鮮度の一滴では下につける土台プレゼントをしたり、最初から厚紙で覆って倒れないようにしたものを出したりしました。
しぼりたて生の方はそういうプレゼントは当時行っていなかったと記憶しています。蓋もあるおかげで倒れても安心だけどもやや倒れやすかったのも原因か、蓋を外してつけるという行為が少し面倒だったのか、鮮度の一滴人気を覆すほどには至りませんでした。
「しぼりたて生」のパウチタイプはほどなくして終売。その後に登場したのが、現在でも売れに売れ続けている二重構造ボトルを採用した「しぼりたて生」シリーズなのです。
プレスリリースはこちら。
これを見ると、2011年8月発売とありますね。
いつでも新鮮卓上ボトルという名前で200ml版は売り出されていたのですね。
これがもう本当に売れに売れて。歴史に名を残す大ヒットになったというわけです。
●なにが問題だったのか
ここでもう一度テレビで紹介されたときの文言を見てみましょう。
「登場から6年、2016年にはこのボトルを使った醤油シリーズの年間売上は100億円以上に」
登場から6年で2016年というと、登場は2010年を指すことになります。6年目だったら2011年の可能性もありますが、通常は2010年を連想するでしょう。
2010年には「しぼりたて生」シリーズは販売されていますが、ボトルは販売されていません。したがって「登場」が2010年を指している以上、ここは間違いと言えます。
そして、空気に触れない容器はヤマサ醤油さんの方が先に販売を開始していてしかもヒットしているということもポイントのひとつです。ただ、それを上回る超絶大ヒットをしたのがキッコーマンさんの商品だったんだよ、ということですね。
というところを、醤油に興味のある方は覚えておいていただけたらと。
もう一度繰り返しますが、テレビの限られた時間の中でわかりやすく表現するために、キッコーマンさんに絞って話を伺うのは間違いとは思っていません。あの場はあれでいいと思っています。
ただ、キッコーマンさんだけでなくヤマサ醤油さんのファンでもあったのと、きちんとした歴史といいますか、このままだと空気に触れない容器を発明したのはキッコーマンだったという誤解を招く可能性があるため、正確なところはどこかに残しておかないといけないなーと思ったのでした。
2021/4/12 11:30追記
思った以上に読んでいただけてびっくりしています。例によってコメントに対してのお返事等をしていけたらと。手動でやっているので確認漏れがあったら申し訳ありません。
●6年はあっているよ問題
いや、これはちょっと違うと思う。数え年と満年齢の混在は今でもあると思うので“登場から6年で2016年というと、登場は2010年を指すことになります。6年目だったら2011年の可能性もありますが、通常は2010年を連想するでし (id:kjin)
2011〜2016年なら2016年は6年目で合っている。2016年が終わった時点でその年の年間売上が100億円以上といっているわけだから。それに特に傷みやすい<生しょうゆ>を一般販売することについての話だからヤマサ関係ある? (id:qouroquis)
番組からはボトルネック以前にも生醤油は売っていたけど、一般向けにはヒットしておらずボトルの登場で売り上げが増えたという印象を受けました。「登場から6年、2016年には」なら、2011年を意味すると思います。 (id:lastline)
キッコウマンのパウチの「生」しょうゆの発売日が2011/2。ボトルタイプの「生」しょうゆは2011/8。前者は2021/4月段階で6年目だから嘘ではない。だからこそ火入れをしてない「生」であることをよりアピールしていた。 (id:kenchan3)
“登場から6年”なら間違ってないと思うんだが。 (id:prdxa)
あ、あれ?
ちょっと勘違いをしておりました。
たとえば2021年4月に発売されたものは、2021年7月で「登場して3ヶ月」、2021年11月に入ると「登場して半年」と言うじゃないですか。ここで勝手に「登場して半年(が経ちました)」と()内を勝手に補って考えていました。2022年4月で「登場して1年」となるのではないかと。したがって、2011年8月に発売されたものは、2017年8月で「登場して6年」と思い込んでいたのです。
でも実際は年度の売上の話になるので、2011年の分の売上が「登場して1年の売上」、2011〜12年の売上が「登場して2年の売上」、2011〜16年の売上が「登場して6年の売上」となるのですね。なるほど。
これは完全に勘違いでした。謹んで訂正してお詫びいたします。
●容器の話をもう少し
特許調べてないが空気に触れない容器を発明したのは醤油メーカーではなく容器メーカーではないのだろうか?という疑問。醤油メーカーならば当然特許を取っているはずで他社の参入は難しくなる。 (id:fhvbwx)
空気に触れないボトル(内袋が成形されている)の原型は21世紀初頭に吉野製作所が開発した中身を使い切れるコンディショナーボトル(P&Gヴィダルサスーン)と推測。まさか生醤油で復活するとは思わなかった。 (id:graynora)
特許関係の話はここがわかりやすかった。 https://www.foodwatch.jp/secondary_inds/soybeanclmn/37008/ (id:atohiro)
ヤマサとキッコーマンはそれぞれ独自特許。ヒゲタはキッコーマンの特許を使っている。他社は特許を使う障壁があるという。 https://bit.ly/3t8a4cP えごま油は、同様のボトルが多い。少なくとも2社が使っている。 (id:blueboy)
初代のヤマサは新潟県三条市の悠心の開発、キッコーマンは独自特許で追随し、更にその後、吉野工業所とやわらか密封ボトルを開発した、と。 https://is.gd/Jugh0U (id:ank0u)
たしか容器メーカー「悠心」の社長が当時の醤油に不満があって開発したとかって当時のインタビューかなんかテレビで見たような?んで好みの醤油はヤマサだったからそこに営業かけたとかなんとか(うろ覚え) (id:colorless4)
はい、皆様のおっしゃるとおり、ヤマサさんの鮮度の一滴が「悠心」さん開発のもので、キッコーマンさんの鮮度ボトルが「吉野工業所」さん開発のものです。ヴィダルサスーンの件は知りませんでした。
元々の経緯は、当時大成ラミックにおられた二瀬さんが2005年に「ラミネート袋と紙箱を組合わせた液体包装容器を用いた醤油の実用評価」という論文を発表。それを読んだヤマサさんが是非うちの醤油でやりたいと。
その後二瀬さんは(株)悠心を作り独立、ヤマサさんと鮮度の一滴を作り上げていくという流れのようです。詳しくはこちらの「鮮度の一滴開発秘話」を読んでもらえればと思います。
一方のキッコーマンさんは吉野工業所さんと二重構造のやわらか密封ボトルを共同開発します。二社の関わりはかなり古くからあり、1977年に国内で初めてPET容器の醤油が販売されますが、その容器を手がけたのが吉野工業所さんだったりします。
マーケティング的にはデラミボトルの出現で、特売1L158円から脱却できたこと、飲食店で継ぎ足しが無くなったことだと思う。/ 醤油業界は容器の改革多いんだよな、最初のPETボトルは醤油だし。逆止弁料理酒も手放せない (id:y-wood)
y-woodさんが言われている最初のPETボトルというところですね。これも吉野工業所&キッコーマンの共同開発でした。
飲食店の注ぎ足しがなくなったのはよく聞きます。やわらか密封ボトルだと、落としても割れない(ので掃除等の手間が減る)というのもポイントでしょうか。本当に飲食店の卓上の景色を一変させてしまいましたよね。
ヒゲタ醤油さんはキッコーマンさんとは業務提携をしているので、このボトルをそのまま使っているのも納得ですね。「本膳生」とかよくぞ出してくれた! という感じです。
それ以外の他社が使っているかどうかですと、最近では結構使っていたりもします。手元にあってすぐに出てきたのはイチビキさんの「生 さしみ溜」とかでしょうか。
どこで吉野工業所製とわかるかというと、ボトルの底を見てみるとわかります。この「Y」に「・・」があしらわれているロゴが吉野工業所さんのマークなのです。
こういうボトルは全部吉野工業所製では。他にもあるの? と思う方もいるかもしれません。たとえば「ちば醤油」さんの「下総醤油」は違うメーカー製だったりします。
並べてみるとロゴが違いますよね。
ちょっとこちらはどこの会社かわかっていないです。すみません。
●酸化の話
あの番組もこの記事も、空気に触れさせないことが醤油にとって如何にだいじか、という肝心の点を語らないのは何故なんだ。 (id:nobiox)
いやー、番組内でも空気に触れないのは重要という話はされていたと思います。その部分に関しては何も異論がないのでこちらの記事でも触れていないだけでした。論点がずれちゃう危険性がありますし。あと、話し出したら止まらなくなる危険性が!
というわけで酸化の話に戻すと、醤油は空気、特に酸素に触れると酸化します。褐変(色が黒くなる)し、独特の芳香を放つのです。
醤油の変化は実は酸化だけではありません。紫外線などにも弱いし、温度が上がっても変化します。これは、醤油の中のアミノ酸と糖分が反応して生成される「メラノイジン」という物質が関係しています。
メラノイジンが褐色物質で、独特の芳香を持っています。このメラノイジンが増えれば増えるほど、液体の色は黒くなっていきます。実は醤油の黒色はこのメラノイジンにも関係していたのですね。
なので温度が高いところとか、酸化が進むようなところに放置しておくとメラノイジンが増え、醤油がどんどん黒くなり、香りも変化していくのです。だから醤油は「冷暗所」に保管しましょうと書いてあるわけです。今だったら冷蔵庫が一番良いというのもそういう理由です。
で、酸素は意外といろんなものを通り抜けます。普通のペットボトルだと酸素透過性があるので、醤油を保管していると実は徐々に酸化していったりもするのです。一連の空気に触れない容器はこの欠点を内袋で克服しているのですね。
ちなみにペットボトル容器も進化していて、酸素を通さないものを開発したりしています。有名なのはキリンさんのDLC(Diamond-Like Carbon)でしょうか。中にコーティングをして酸素を通さないようにしています。
●きじょうゆとなましょうゆと
関係ないが「きじょうゆ」と「なましょうゆ」って同じなのか違うのかは気になった (id:norinorisan42)
ここ、実は相当難しいというかややこしい話があります。
醤油の「生」には3種類があるのです。
1.生揚醤油(きあげしょうゆ)
醤油は大豆や小麦を発酵させて造ります。もちろん発酵しているどろどろとした「もろみ」では料理に使いにくいので「しぼり」をし、液体の醤油だけを取り出します。
このしぼったままの醤油が「生揚醤油」もしくは「生揚げ」と呼ばれるものです。
お酒の蔵見学にいったときに、しぼったそのままを味わわせてもらえることがあるのですが、その醤油版と考えるとわかりやすいでしょうか。風味豊かでおいしそうと感じますよね。実際、おいしいです。
ただこの「生揚醤油」には問題があります。
一般に流通している醤油はここから「濾過」をして不純物を取り除き、「火入れ」で加熱殺菌をして品質を安定させます。ところが生揚げはこれをしていないのです。
だからこそ風味が豊かといえなくもないのですが、問題は菌が生きていて発酵を続けていることにあります。仮に店頭に「生揚醤油」を並べていたら、中でどんどん発酵が続いて品質が変わってしまう可能性があるのです。
そのため、JAS法では生揚醤油は正確には醤油と認められていません。なのでラベルの名称のところを見ると「生揚げ」とか書かれていることが多いです(醤油とは書かれていないことが多い)。
さらに冷蔵保存が必要で、賞味期限が一ヶ月ほどです。と、まあいろいろと難しいのですが、それでも風味豊かで味わい深い醤油なのは間違いありません。
試してみたい方は、関東ですと職人醤油さんの松屋銀座店に行くのが確実かと思います。番組では職人醤油の高橋万太郎さんが解説されていましたね。
(関西在住なのでここ1年伺えていないのですが)前と変わっていなければ、埼玉県の弓削多醤油さんの濃口醤油の生揚醤油と、香川県のヤマロク醤油さんのさいしこみ醤油の生揚醤油を購入できるかと思います。
2.生醤油(きじょうゆ)
そして、きじょうゆです。これが一番ややこしい。
これは厳密には醤油の名称ではありません。料理業界用語です。
料理をするときには、出汁やみりんで味を調えた醤油を使った方がいいときもあれば、何も加えていない醤油を使った方がいいときもあります。でもどちらも同じ「醤油」と呼んでいたら現場が混乱してしまいますよね。
そこで、何も加えていない、そのままの醤油を「きじょうゆ」と呼ぶようになりました。これが「きじょうゆ」の正体です。
したがって、火入れをしていたり、濾過をしていたり、そのときに使っている製品によってまちまちになります。「きじょうゆ」と言ったからといって、生(なま)な醤油じゃないというわけです。
3.生醤油(なましょうゆ)
そして番組でも話題になった「なましょうゆ」です。
これは製造工程の最後の部分の「火入れ」を行っていない、加熱殺菌をしていない醤油ということになります。
菌はどうするのかというと、マイクロフィルターなどで濾過をして取り除きます。なので、内部で発酵が進んでしまう心配はありません。
火入れによる加熱は非常に難しく、それがあるからこそ生み出された風味もあります。でも、失われてしまう風味もまたあります。簡単にいうと、前述のメラノイジンは加熱するとたくさん生成されるので、加熱殺菌のために温度が上がるとどうしても醤油の色が黒くなるし香りも変化するというわけですね。
それをしていない醤油が「なましょうゆ」なわけです。加熱をしていないので、加熱によって変化する前の醤油の風味を味わえます。これが「しぼりたて生」シリーズの「生」ですね。
加熱殺菌をしていないので「生」というのは、日本酒などとも同じだったりします。
ちなみになんですが、市販されている「生醤油(なましょうゆ)」は、「生醤油(きじょうゆ)」と区別をするために、必ずラベルの「生」に「なま」とふりがなが振ってあります。お手元の生醤油を確認してみるといいかもしれません。
2020/11/2(月)18:40からの『角田信朗のおっさんぽ』に出演します(3週連続?)
実は先日収録してきました。久々のテレビ出演です。
格闘家の角田信朗さんの番組である、『角田信朗のおっさんぽ』に出演します。テーマは醤油です。
このリンク、番組放送が終わったら消えてしまう気がする……
一応、さっきケーブルテレビの番組表で見たやつもぺたりと。
はい。
10分番組です。一応2週の予定で収録をしたんですが、めちゃめちゃしゃべったので3週分になるかもと言われております。
角田信朗さん、テレビで見たままのというか、テレビで見た以上に面白い方でした。もう話が止まらない止まらない。お互いに脱線するもんですから(一応、醤油の話に全部結びつけましたよ!)、お話が盛り上がる盛り上がる。
というわけで、実はいまだに何週出るのか把握できていないのですが、少なくとも来週はまた出演しているはずです。
関西のJ:COMでの放送なので、ほかの地域の方は見られないかもしれませんが、見られる方はぜひ見てください!
10/31(土)にキウイゲームズでアナログゲームのイベントをやります
告知が遅れてしまっている間に定員が埋まってしまったのですが、数名空きが出たようなので告知します。
とはいってもタイトル通りではあるのですが、10/31(土)に大阪は恵美須町にある『キウイゲームズ』さんでアナログゲームのイベントを行います。あ、もちろん感染予防対策はできるかぎり行って安全に遊べるように注意していますよ(後述)
漫画家の磨伸映一郎先生と不定期に行っているイベントで、テーマによっては我々のトークコーナーがあったりするのですが、今回はもうちょっとこじんまりと、お店の一角をお借りしてアナログゲーム会をやりましょうという感じです。
今回のテーマは「奇ゲー」です!
コンセプトが奇妙だったり、コンポーネントが奇妙だったり、ルールが奇妙だったり、そもそもどうしてそれをテーマにしようと思ったのかな、みたいなゲームをそろえてみました。
ゲストはお二人も来てくださいます。まずは小説家の丸山英人先生!
丸山先生は、いったいどこからこういうゲームを見つけてくるの?! という「奇ゲー」をいつも持ってきてくださる、もはや奇ゲーコレクターと言っても差し支えないほどたくさんお持ちの方なのです。
先日遊んだ「Esperaization」なんかも丸山先生が持ってきてくれました。これはテーマが「言語」で、新しい言語をみんなで作ってしまいましょうというゲームです。奇妙なコンセプトに分類されるかな?
関西作家アナログゲーム会から帰宅! 今回遊んだ中で一番盛り上がったのは『Esperaization』です。
— むむ@白熱日本酒教室全3巻発売中 (@mu_mu_) 2020年10月27日
簡単に言うと自分たちで新しい言語を作るゲーム。名前も人工言語のエスペランザ語からきていますよね pic.twitter.com/ATvXnhHmwa
あまりにも奇ゲーをお持ちなのと審美眼が高すぎるせいか、並のものでは奇ゲーとは思っていない節があるので、もう手当たり次第持ってきちゃってくださいとお願いしてあります。
そしてもう一人は、グループSNEから友野詳先生がいらっしゃいます!
いよいよ数日後、31日に大阪キウイゲームズにて開催となる誰でも参加可能な不定期アナログゲーム会ですが、今まで名を隠していた第四の豪華ゲストはグループSNEの友野詳先生!
— 磨伸映一郎@氷室13巻発売中! (@eiitirou) 2020年10月28日
友野先生から直でティーチングを受けながら一緒に奇ゲーを遊べるチャンス到来でございます!https://t.co/wu9MlLT0Kk
そして友野詳先生が持ってきて下さる近日発売予定の話題作は、今大注目の「なろう系カードゲーム」、
— 磨伸映一郎@氷室13巻発売中! (@eiitirou) 2020年10月28日
『即身仏になろう!』
「五穀集めフェイズ」「五穀断ちフェイズ」「土中フェイズ」と進めて漆を飲み読経をあげて菩薩点を稼ぎながらひからびよう!(どんなゲームだよ pic.twitter.com/TWu5sxVxcN
街で噂の即身仏アナログゲーム『即身仏になろう!』を誰よりも1早くプレイして、他のアナログゲーマーとの徳の差を広げよう!
— 磨伸映一郎@氷室13巻発売中! (@eiitirou) 2020年10月28日
ぼくも土中入定してみたいなぁという貴方の夢は、きっと叶う。
なんと、11月13日発売予定の『即身仏になろう!』を持ってきてくれます。話題作をいち早く遊べるチャンス!
なお、当日は我々の著作物の物販コーナーも用意していたりします。いつもの醤油手帖シリーズとか持って行くのですが、せっかくなんでコピー誌を作りたいと思い、ガガッと一冊作ってみました。
コピー誌をセブンイレブンで試し印刷してきました。写真も白黒になるけどよく見えてます。ちなみにこれはMacのPagesアプリのガイドブックテンプレートで作りました。なので裏表紙はテンプレートそのまま(正確には「おしまい」とだけ書いた)です。手抜きしすぎたかも。 pic.twitter.com/UbQiuwUnXx
— むむ@白熱日本酒教室全3巻発売中 (@mu_mu_) 2020年10月28日
中はこんな感じです。テンプレートをそのまま流用レイアウト。 pic.twitter.com/bHxTijpffk
— むむ@白熱日本酒教室全3巻発売中 (@mu_mu_) 2020年10月28日
はい、キウイゲームズさん周辺の観光ガイド本です。
日本橋のあれやこれやに行けばいいとかそういうのではなく、割と普通の名所とか、ご飯がおいしいところとか、そういうのをちりばめてみました。
コピー誌で24ページなのでセブンイレブンの小冊子印刷でやって……まあ、たぶん200円ぐらいで頒布します。足りなくなったらすぐ近所のセブンで印刷して増刷も可能! 受注生産!
そして、ご時世的に大事なことなのですが、感染予防のため以下のことを遵守、もしくはあらかじめご了承いただく必要があります。
- マスクは必ずご着用ください。プレイ中も基本的には外さないようにお願いします
- 入口で手指消毒にご協力お願いいたします
- 熱がある方、咳き込んでいる方は入場をお断りさせていただきます
- 三密を避けるためと換気のため、窓を開けることが多くなります。寒くなるかもしれませんので厚着の用意をお願いします
- 飲み物は飲めますが、会場内での食事はできません
私も携帯用のスプレーボトルに消毒に使える濃度のアルコールをたくさん持って行く予定です。プレイ前に軽く消毒するという感じで、こまめに消毒で対応していきたいものです。
予約はこちら……って、ここまで書いている間に増員された枠が埋まっている!
あああ、ありがとうございます。
そしてキャンセル待ちを含む当日参加枠については現在調整中とのことで、キウイゲームズさんのTwitterに御注目いただければと
「キウイゲーム会」定員に達しましたので受付を終了いたしました。沢山のご参加ありがとうございます。なおキャンセル待ちを含む当日参加枠については現在調整中です。#kiwigames #ボードゲーム #アナログゲーム
— キウイゲームズ (@KiwigamesJP) 2020年10月29日
それでは当日お目にかかれるのを楽しみにしております!