醤油手帖

お醤油について書いていきます。 料理漫画に関してはhttp://mumu.hatenablog.comへ。お仕事の依頼とかはkei.sugimuraあっとgmail.comまでお願いします

C98用の本は5月中に通販開始予定です

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残念ながら参加予定だったコミックマーケット98は中止になってしまいました。

サークル『醤油をこぼすと染みになる』は本日5月4日、月曜日南地区ナ-45bで参加予定だったのですが、当然参加できません。このエントリも自宅で書いております。

でもコミケに合わせて新刊はなんとか作りたいなーと作業を頑張っていたのですが、あれです。本来なら今日がC98の参加予定日だったのですが、間に合いませんでした。はい。いわゆる『新刊を落とした』というやつです。なんということでしょう。

というわけでTwitterで行われている #エアコミケ は既刊で参戦です。

 

栄養たっぷり! 暑い夏もこれを飲めば夏バテ知らずに?! な「甘酒」についてとことん語り、推し甘酒なんかも書いた『醤油手帖 甘酒草子』 

shouyutechou.hatenablog.com

 

みんな大好き、万能調味料「めんつゆ」についてあれこれ語り明かし、市販のめんつゆを食べ比べて推しめんつゆを決めたりしてる『醤油手帖 めんつゆ草子』

shouyutechou.hatenablog.com

 

あとこう、あれです。私の趣味の良いところと悪いところがたっぷり出ていると評判の路傍の石「いけず石」に注目してあれこれ書きまくった『いけず石観察手帖2』

shouyutechou.hatenablog.com

 

このあたりの在庫が潤沢にあるかと思います。

 

通販はこちらのショップとかで買ってもらえればと!

www.melonbooks.co.jp

shop.comiczin.jp

 

で。

せっかくのエアコミケの日なんで、立ち読み用というわけじゃないんですが、現在絶賛作業中の『醤油手帖 だしの知識』の冒頭をちょっとだけぺたりと貼ります。まだここから修正される可能性は大いにあるというか、確実に修正していくのですが、簡単な立ち読み感覚で読んでいただけたらと! むしろ、完成したときはどれぐらい修正されているのかを見比べてみるのもいいかもしれません?! 5月中には通販開始予定ですのでよろしくお願いいたします。

↓ここから

まえがき

 料理、それも和食の中で、これがないといけない根本は何なのか。少し抽象的な質問なので、意味をとらえにくいかもしれません。これは調理方法などではなく、できあがった料理の中にはこれがないといけない、味の方向性が定まらない、物足りなさを感じさせるものという意味です。

 いろいろな考えがあると思いますが、答えは「だし」でしょう。料理初心者がお味噌汁を作ったときにだしを入れ忘れたために、ぼやけた味になるというのはグルメ漫画でも定番の料理あるあるですよね。料理の決め手になる、非常に重要なものです。

 それだけでなく、だしはその重要性からさまざまな形容をされていたりもしています。一番有名なのは90年代に一世を風靡した人気テレビ番組『料理の鉄人』において、和の鉄人道場六三郎氏の必殺技ともいえる「命のだし」でしょう。料理の命、料理の要こそが「だし」であるということを表した名フレーズです。福井アナウンサーによる「おーっと鉄人道場! ここで命のだしを引き始めました!」の実況と共に、驚くほど大量の鰹節をどさどさ鍋に入れる姿を覚えている人もいるかもしれません。他にも、「秘伝のだし」など、要であるがゆえに他の料理人には製法を伝えない、いわば一子相伝の奥義のような存在であることを思わせる言葉もあります。

 本書は、そんなだしについての知識をまとめたものです。そもそもだしとは何なのか、どうやって作られているのか、どういう種類があるのか、合わせだしがおいしくなるのはどうしてなのか。そういった「だしの知識」を一冊に詰め込んでみました。わからないことがあったときには簡単に開けるように、手帖サイズになっています。化学が苦手な人にも極力わかりやすくするために、化学式などはあまり書かないようにしていますが、アミノ酸などについてはどうしても名前を出さざるを得ないため、少し専門用語が多くなっているかもしれません。かなり踏み込んだことまで書いているものの、極力わかりやすさを重視していますので、だしについて知りたい人には必ずや満足いただける本になったのではないかと自負しております。

 ここで少し注意事項を。本書では一般的な「だし」はひらがな表記にしています。ダシや出汁は固有名詞でのみ使っています。また、いわゆる味覚の「うまみ」は「うま味」と表記し、おいしいという意味の「うまみがある」などは「旨み」と表記しています。あらかじめご了承ください。

 本書を読んで、だしの奥深さの一端に触れ、楽しんでいただけたら幸いです。

だしとはいったい何なのか

 だしについて語るためには、まず「だし」とは何なのかを整理しなければなりません。イメージしやすいのは、お湯や水に鰹節や昆布などのうま味が溶け出したものでしょう。ここから「だしとは動物や植物の食材からお湯や水にエキスが溶け出したもの」と定義できます。もちろんこれは正解で、最も広義のだしといえるでしょう。例として、おでんやシチューの煮込み料理やスープでは野菜や肉のうま味があればあるほど「だしが出ている」と形容されます。まさにエキスが溶け出していることを表していますね。

 そうなると悩ましいのが、その条件に当たるものはすべて「だし」と呼んでいいのかという問題です。チャノキの葉からエキスを抽出した液体=お茶もこの定義だとだしになってしまいますよね。たしかにお茶、中でも昆布茶はもう半分以上だしのような気がしますが、これはこれで間違いではないような、でも違和感があるような、不思議な気がします。もう少し、だしについて多面的に見ていくことにしましょう。

 

●だしは調味料?


 だしは一体どこで用いられるのでしょうか。もちろん、料理に使います。ということは、料理におけるだしの役割を見てみると、だしの正体が明らかになるかもしれません。

 だしは料理にうま味を加え味わいを豊かにします。ということは、だしとは調味料の一種であるとも言えそうです。ですが、だしソムリエ協会が監修する『だし検定公式テキスト』(実業之日本社)を見てみると「だしと調味料は違うものだ」とあります。だし≠調味料なのですね。だしは料理の土台、ベースとなるものなので

「だし」+「調味料」+「具材」=「料理」

であるという考え方です。味を調えるというよりは、すべての礎であるということですね。
 この考え方は、だしには大きく分けると二種類あるところからきています。ひとつは、昆布や鰹節から抽出したもので料理に加えるもの。こちらは料理の調味に用いているため、調味料の一種といっても問題はありません。いわば、「独立してとるだし」と言えます。

 もうひとつは、調理中に「自然に出てしまうだし」です。おでんやシチューなどの煮込み料理では、煮込んでいる肉や野菜からエキスが出てきて、料理に奥行きを与えてくれます。これがあるのとないのとでは、味に大きな違いがでるのは間違いありませんが、かといって「調味のために加えている」わけではありません。


 さらにいうと、調味料の中にはだしをベースにしたものもあります。だし醤油が代表でしょう。また、フランス料理のソースなどもだし(フォン)をあくまでベースにし、そこから味を重ねていって完成します。調味料を作るためのベースであり、直接料理の調味をするものではありません。したがって、必ずしもだしは調味料であるとは言えないのです。

 

●だしの構造


 ではいったい「だし」とは何なのでしょうか。次に「だし」の構造を見てみましょう。だしをどんどん分解していくと、すべてのだしは「味」「香り」「カロリー」の三要素からなりたっていることがわかります。他の要素、たとえば舌触り(食感)は必要ないのですね。

 「味」は、主にうま味が重要視されます。かつおだしでも昆布だしでも、うま味がないと物足りません。だしは料理にうま味を足すために使うのですから、「甘」「酸」「塩」「苦」のどの味よりも必要な味わいなのです。逆に言うと、うま味がないだしは成立しません。

 「香り」は食材のさまざまなうま味だけでなく、香りもだしには抽出されることを意味します。ただしこれは必ずしもあればいいというわけではありません。たとえば昆布からだしを引くときに、煮立てすぎると少し生臭い香りを抽出してしまいます。そのため、絶妙のタイミングで昆布を取り出した方がきれいな味わいのだしになるのですね。だしにとって香りは善し悪しになるため、バランスが非常に重要になります。

 「カロリー」はもちろん液体の中に抽出された食材の栄養素です。脂分が多くなればカロリーも高くなるでしょう。だしにとってカロリーが重要かというと、これもそうではありません。かつおだしや昆布だしにほとんどカロリーがないことからも、優先順位が低いことがわかるのです。

 以上のことから考えると、やはり「味」、それも「うま味」が重要であることがわかります。

 

●結局だしとは何なのか


 いろいろと述べてきましたが、「だしとは動物や植物の食材からお湯や水にエキスが溶け出したもの」であり、「うま味がしっかりとしているもの」と定義できます。本書では以上の定義で話を進めていきます。

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