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醤油手帖

お醤油について書いていきます。 料理漫画に関してはhttp://mumu.hatenablog.comへ。お仕事の依頼とかはkei.sugimuraあっとgmail.comまでお願いします

秋田しょっつる

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魚醤の中で一番有名なものは何か? もしくは魚醤の中で知っている物の名前をあげてみて、という質問があったら。多くの人が、「しょっつる」と答えるのではないだろうか。もちろん「いしり(る)」も有名だが、しょっつるの知名度はそれを上回るのではないだろうかと思うのだ。

Googleでの検索の件数は「いしり(る)」が圧倒的に多いながらも「しょっつる」の方が有名ではないかと思う根拠は、関東圏ではしょっつるを使っているお店、すなわち秋田県の郷土料理を出すお店が結構多いからだ。秋田県の料理と言えばきりたんぽ鍋や比内地鶏が有名で、それを出しているお店も多い。一方、能登半島の郷土料理といって、きりたんぽ鍋に匹敵するようなものを思い浮かべてみろと言われても、思い浮かばない人も多いのではないだろうか。もちろんいしり鍋やいしりの貝焼きなど美味しいものはたくさんあるし、実際僕は大好きなものが多い(香箱ガニやのどぐろは絶品だ!)のだが、能登半島の郷土料理の専門店の数は秋田県の郷土料理の専門店に比べると少ない。そのため、お店で「しょっつる」を見かけることはあっても、「いしり」を見かけたことがある人は少ないのではないだろうか。

さて、そんな「しょっつる」は、「いしり(る)」や、以前にも紹介させていただいた「いかなご」と並んで日本三大魚醤の1つだ。秋田県の郷土料理には欠かせない魚醤で、ハタハタという20cmぐらいの魚と塩から作られる。ハタハタを樽に詰め込んで塩漬けにし、2年ぐらい発酵させてドロドロの液体状にしたものを漉して作られるのだ。秋田県の漁港周辺では、昭和の初期ぐらいはでは醤油が高価で手に入れづらかった。そこで、当時は大量に水揚げされて捨て値で売られていたハタハタを買い込み、各家庭でしょっつるを作っていたというわけだ。

ちなみにしょっつるを発酵させるときには、ハタハタと塩だけで他に麹などを入れず、ハタハタの自己消化などによって発酵させるのがポイントになる。この辺が、前回や前々回に紹介した、僕が勝手に新世代の魚醤と呼んでいる魚醤との最大の違いだ。

今回紹介する「秋田しょっつる」は諸井醸造所の製品になる。ここのしょっつるの最大の特徴は、ハタハタと塩だけで作っていて、しかも無添加ということがあげられる。実は、本来のしょっつるはハタハタと塩だけで作るのが正しいのだが、他の魚を混ぜたりするしょっつるも多いのだ。これは、一時期ハタハタを乱獲して漁獲高が激減し、漁業制限がかかったことに由来する。そういった中で、ハタハタと塩だけで作られたしょっつるが、この「秋田しょっつる」なのだ。ちなみに諸井醸造所のしょっつるシリーズの中には1999年に作られて熟成させた、ビンテージしょっつるがあったりする。

http://www.shottsuru.jp/

「秋田しょっつる」を開けてみると、まずはその色が目に入り、そして独特の香りに気づくだろう。醤油とは思えないぐらい美しい薄い琥珀色なのだ。そして、他のしょっつるに比べるとマイルドではあるものの、魚醤独特の香りがする。味はというと、やはり塩気が濃い。元々「しょっつる」は秋田県の方言で「塩汁」のことだ。秋田弁では「汁」が「つゆ」になり、「つる」に訛ったところから来た言葉なのだ。そう、しょっつるは名前の通り、非常に塩っ辛い魚醤になのだ。そして、独特の香りを持っている。多くの人が魚醤と聞いて思い浮かべる、あの香りや塩っ辛さはこの「しょっつる」に由来しているものも多いのではないだろうか。

もちろん、この「秋田しょっつる」はただ塩っ辛いだけではない。塩辛さの中にも、魚の旨味が感じられる作りになっている。大豆を使った醤油に比べるとやはり旨味が濃いので、隠し味などでも良く使われているというのがうなづける。他の醤油と混ぜて使うほたて魚醤のような使い方ではなく、料理にひとさじいれたり、出汁のベースにしたりするのがいいだろう。

鍋物にしたりするのもいいのだが、個人的に試してみて美味しかったのはパスタのベースにするというものだ。ちょっとしたシーフードやエリンギ、パプリカ、シーチキンを、オリーブオイルと胡椒としょっつるで味をつけたパスタが実に美味しかった。いかなご魚醤の時にも思ったのだが、癖の強いタイプの魚醤は麺類との相性がいいのかもしれない。

ちなみにラベルには

「調理に食塩のかわりに秋田しょっつるを入れてみてください。彼方の味付けが変わります」

と書いてあったりする。「塩汁」ならではの使い方と言えるだろう。

さて、入手方法だが、比較的しょっつるは色々なお店で手に入り安いと思う。なので、とりあえず楽天のお店のリンクを貼るだけにしておく。しょっつるを買う時にひとつだけ注意することがあるとすれば、原材料名をチェックした方がいいということだろうか。伝統の味が試してみたければ、「ハタハタ・食塩」とだけ書いてあるものを選ぶといいだろう。

諸井醸造所 秋田しょっつる 130g

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